最低賃金が上がると、A型では、時給が新しい最低賃金を下回る利用者の給料を、新しい額まで上げることになります。増えた分を、今年度の生産活動の収支で払いきれるかどうかが問題です。
今年度(2026年度)の最低賃金は、全国加重平均で56円上がって1,177円になりました。最低賃金ちょうどの利用者が月80時間働くと、1人あたりの給料は月4,480円増えます。
同じ条件の利用者が20人いれば、事業所の負担は月89,600円、1年で約108万円増える計算です。上げ幅は都道府県ごとに54円から65円まで違い、上がる日も10月1日から12月2日まで分かれています。
増えた給料は、生産活動の収支から払う給料の総額(賃金総額)に入ります。今年度の収支が賃金総額を上回るかどうかは、来年4月に出すスコアの生産活動の点になります。
この記事では、都道府県ごとの1人あたりの増え方、事業所全体での計算のしかた、点への影響、3月末までにできることを書きます。
都道府県ごとの上げ幅と、1人あたりの増え方
下の表は、厚生労働省が公表した今年度の地域別最低賃金の一覧から作りました。右の2列は、最低賃金ちょうどで月80時間(1日4時間・週5日)働く利用者1人の場合に、給料がいくら増えるかを計算したものです。
| 都道府県 | 上げ幅 | 新しい額(改定前) | 上がる日 | 1人の増加・月 (月80時間) | 1人の増加・1年 (12か月分) |
|---|---|---|---|---|---|
| 北海道 | +56円 | 1,131円(1,075円) | 10月1日 | 4,480円 | 53,760円 |
| 青森県 | +61円 | 1,090円(1,029円) | 10月29日 | 4,880円 | 58,560円 |
| 岩手県 | +59円 | 1,090円(1,031円) | 12月1日 | 4,720円 | 56,640円 |
| 宮城県 | +60円 | 1,098円(1,038円) | 10月1日 | 4,800円 | 57,600円 |
| 秋田県 | +59円 | 1,090円(1,031円) | 10月14日 | 4,720円 | 56,640円 |
| 山形県 | +60円 | 1,092円(1,032円) | 10月30日 | 4,800円 | 57,600円 |
| 福島県 | +61円 | 1,094円(1,033円) | 10月16日 | 4,880円 | 58,560円 |
| 茨城県 | +62円 | 1,136円(1,074円) | 10月18日 | 4,960円 | 59,520円 |
| 栃木県 | +57円 | 1,125円(1,068円) | 10月1日 | 4,560円 | 54,720円 |
| 群馬県 | +57円 | 1,120円(1,063円) | 10月3日 | 4,560円 | 54,720円 |
| 埼玉県 | +55円 | 1,196円(1,141円) | 10月1日 | 4,400円 | 52,800円 |
| 千葉県 | +55円 | 1,195円(1,140円) | 10月1日 | 4,400円 | 52,800円 |
| 東京都 | +54円 | 1,280円(1,226円) | 10月1日 | 4,320円 | 51,840円 |
| 神奈川県 | +54円 | 1,279円(1,225円) | 10月1日 | 4,320円 | 51,840円 |
| 新潟県 | +58円 | 1,108円(1,050円) | 10月1日 | 4,640円 | 55,680円 |
| 富山県 | +57円 | 1,119円(1,062円) | 10月1日 | 4,560円 | 54,720円 |
| 石川県 | +59円 | 1,113円(1,054円) | 10月3日 | 4,720円 | 56,640円 |
| 福井県 | +59円 | 1,112円(1,053円) | 10月4日 | 4,720円 | 56,640円 |
| 山梨県 | +61円 | 1,113円(1,052円) | 11月1日 | 4,880円 | 58,560円 |
| 長野県 | +56円 | 1,117円(1,061円) | 10月2日 | 4,480円 | 53,760円 |
| 岐阜県 | +56円 | 1,121円(1,065円) | 10月1日 | 4,480円 | 53,760円 |
| 静岡県 | +57円 | 1,154円(1,097円) | 10月15日 | 4,560円 | 54,720円 |
| 愛知県 | +55円 | 1,195円(1,140円) | 10月1日 | 4,400円 | 52,800円 |
| 三重県 | +56円 | 1,143円(1,087円) | 10月1日 | 4,480円 | 53,760円 |
| 滋賀県 | +56円 | 1,136円(1,080円) | 10月3日 | 4,480円 | 53,760円 |
| 京都府 | +58円 | 1,180円(1,122円) | 11月16日 | 4,640円 | 55,680円 |
| 大阪府 | +54円 | 1,231円(1,177円) | 10月1日 | 4,320円 | 51,840円 |
| 兵庫県 | +56円 | 1,172円(1,116円) | 10月1日 | 4,480円 | 53,760円 |
| 奈良県 | +56円 | 1,107円(1,051円) | 10月4日 | 4,480円 | 53,760円 |
| 和歌山県 | +56円 | 1,101円(1,045円) | 10月3日 | 4,480円 | 53,760円 |
| 鳥取県 | +60円 | 1,090円(1,030円) | 10月3日 | 4,800円 | 57,600円 |
| 島根県 | +59円 | 1,092円(1,033円) | 10月10日 | 4,720円 | 56,640円 |
| 岡山県 | +57円 | 1,104円(1,047円) | 10月2日 | 4,560円 | 54,720円 |
| 広島県 | +56円 | 1,141円(1,085円) | 10月11日 | 4,480円 | 53,760円 |
| 山口県 | +58円 | 1,101円(1,043円) | 10月8日 | 4,640円 | 55,680円 |
| 徳島県 | +57円 | 1,103円(1,046円) | 11月1日 | 4,560円 | 54,720円 |
| 香川県 | +56円 | 1,092円(1,036円) | 10月1日 | 4,480円 | 53,760円 |
| 愛媛県 | +60円 | 1,093円(1,033円) | 11月1日 | 4,800円 | 57,600円 |
| 高知県 | +63円 | 1,086円(1,023円) | 10月29日 | 5,040円 | 60,480円 |
| 福岡県 | +57円 | 1,114円(1,057円) | 10月4日 | 4,560円 | 54,720円 |
| 佐賀県 | +65円 | 1,095円(1,030円) | 11月15日 | 5,200円 | 62,400円 |
| 長崎県 | +56円 | 1,087円(1,031円) | 11月2日 | 4,480円 | 53,760円 |
| 熊本県 | +58円 | 1,092円(1,034円) | 12月1日 | 4,640円 | 55,680円 |
| 大分県 | +61円 | 1,096円(1,035円) | 11月1日 | 4,880円 | 58,560円 |
| 宮崎県 | +62円 | 1,085円(1,023円) | 10月24日 | 4,960円 | 59,520円 |
| 鹿児島県 | +64円 | 1,090円(1,026円) | 10月25日 | 5,120円 | 61,440円 |
| 沖縄県 | +63円 | 1,086円(1,023円) | 12月2日 | 5,040円 | 60,480円 |
上げ幅が最も大きいのは佐賀県の65円で、1人あたり月5,200円増えます。最も小さいのは東京都、神奈川県、大阪府の54円で、月4,320円です。最低賃金の額では東京都の1,280円が最も高く、宮崎県の1,085円が最も低くなっています。
10月1日に上がったのは15都道府県だけです。この記事を公開した10月28日の時点で、青森県や沖縄県など13府県はまだ上がっていません。上がる日より前に働いた分は、改定前の額のままでかまいません。
表の80時間は計算のための例です。厚生労働省の補助事業として行われた調査(2022年度)では、A型の利用者の1日の労働時間は「4時間から6時間のあいだ」が53.4%で最も多くなっています。1日6時間・週5日なら月120時間なので、表の金額の1.5倍になります。
利用者の側から見た今年度の最低賃金は、記事「就労継続支援A型の時給は10月からいくら?」にまとめています。
事業所全体では「上げ幅×時間×人数」で計算する
事業所の負担がどれだけ増えるかは、利用者ごとに次のかけ算をして足すと分かります。
- 最低賃金ちょうどで払っていた人:上げ幅×その人の月の労働時間
- 改定前の額と新しい額のあいだで払っていた人:新しい額との差×月の労働時間
- もともと新しい額以上で払っていた人:増えない(事業所の昇給の決まりによる)
最低賃金を下回っていないかは、毎月の基本給などを1時間あたりに直して比べます。このとき、通勤手当、家族手当、精皆勤手当、時間外や休日、深夜の割増賃金、賞与は入れません。これらを足して最低賃金を超えているように見えても、除いた額で下回っていれば不足です。

全国加重平均の56円で、20人が月80時間ずつ働く事業所を考えます。増える給料は月89,600円です。10月1日に上がった都道府県なら、今年度の残りは10月から3月までの6か月で、537,600円になります。来年度は12か月分の約108万円です。
給料の締め日によっては、増えた分を払う月が1か月ずれます。月末締め・翌月払いなら、10月の労働分は11月に払う給料から増えます。今年度の試算に、増えた分を働いた月と支払う月のどちらで入れるかは、事業所の会計の方法に合わせてください。
事業主が払う雇用保険料や、健康保険・厚生年金の保険料も、給料に比例して増えます。試算には、給料とあわせて事業主の負担分も入れておきます。
最低賃金より低い額を払う許可(減額特例)を受けている利用者も、給料は上がります。許可された額は「最低賃金×(1−減額率)」で決まるので、最低賃金が上がれば同じ割合で上がります。
増えた給料は、生産活動の収支から払う
A型の事業所は、生産活動の収入から必要な経費を引いた額が、利用者に払う賃金総額以上になるようにしなければなりません(指定基準 第192条第2項)。訓練等給付費などの給付金を給料の支払いに充てることは、災害などやむを得ない場合を除いて認められていません。
賃金総額には、給料、手当、賞与など、名前に関係なく働いた対価として払うものがすべて入ります。最低賃金と比べるときには外した通勤手当や賞与も、こちらには入ります。
つまり、最低賃金が上がって給料が増えた分は、そのまま生産活動の売上か経費の側で埋める必要があります。2025年3月末の時点で、経営状況を把握できたA型4,006事業所のうち774事業所(19.3%)が、生産活動の収支が賃金総額を下回っていました。

今年度の収支が、来年4月のスコアの点になる
いまの仕組みでは、来年4月に出すスコアの生産活動の点は、今年度・2025年度・2024年度の3年度分の収支で決まります。今年度は、このとき「前年度」として扱われます。点は次の6段階です。
- 60点:3年度とも賃金総額以上
- 50点:前年度と前々年度が賃金総額以上
- 40点:前年度だけが賃金総額以上
- 20点:前々年度だけが賃金総額以上(前年度は下回った)
- −10点:前年度と前々年度がどちらも下回った
- −20点:3年度とも下回った
たとえば、2024年度と2025年度がどちらも下回った事業所は、今年度に賃金総額以上になれば40点、また下回れば−20点です。差は60点あります。
2025年度にぎりぎり上回っていた事業所は、最低賃金の分だけ余裕が減ります。2025年度の収支と賃金総額の差を、今年度に増える給料の額と比べてみてください。差より増える額のほうが大きければ、売上か経費を動かさないと下回ります。
収支が下回った事業所は、都道府県などから経営改善計画を求められます。計画を期限までに出していれば、スコアの経営改善計画の項目では減点されません。スコア表の7項目の見方は、記事「A型のスコア表の読み方と点の上げ方」に書きました。
なお、2027年度は報酬改定の年です。2026年9月の厚生労働省の検討チームでは、生産活動の収支の考え方を続けながら「支援の質」の点の配分を高める方向が示されました。まだ検討の段階で、決まってはいません。
3月末までにできること
取引先と、単価を相談する
受けている仕事の単価を上げられれば、増えた給料を売上で埋められます。国の「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」は、受注する側が価格の交渉に使う資料として、都道府県別の最低賃金とその上昇率を挙げています。
同じ指針は、発注する側に対して、その資料で示された希望の価格を合理的な根拠があるものとして尊重するよう求めています。取引先に指針の名前を出す必要はありません。表の上げ幅と、その仕事にかかっている利用者の時間を示すだけで、値上げの理由が具体的になります。
2026年1月に施行された中小受託取引適正化法(取適法)では、協議の求めに応じずに一方的に代金を決めることが禁止されました。当てはまるかは取引の種類や双方の規模で決まりますが、単価の相談を切り出すきっかけになります。
仕事ごとの売上と時間を並べる
受けている仕事ごとに、1か月の売上と、利用者がかけている時間を並べます。売上を時間で割ると、1時間あたりいくらの仕事かが分かります。1時間あたりの売上が新しい最低賃金より低い仕事は、続けるほど収支が苦しくなります。
そうした仕事は、単価の相談をするか、同じ時間でより売上の大きい仕事に替えられないかを検討します。材料費や外注費など、生産活動の経費の側に減らせるものがないかも、あわせて見ます。
毎月の試算で、収支と賃金総額を並べる
今年度の収支は、年度末に締めてから見るのでは手を打てません。毎月、生産活動の収支と賃金総額を並べ、3月末までの見込みを出しておきます。増えた給料を含めて下回りそうなら、その時点で単価や仕事の組み方を見直せます。
最低賃金を下回る給料を払うことは最低賃金法の違反で、50万円以下の罰金の対象です。上がる日のあとの労働分から、新しい額で計算されているかを給与の明細で確かめてください。減額特例は労働局長の許可が要り、障害があるだけでは対象になりません。

上がった時給は、事業所を探している人にも伝える
A型を探している人は、事業所を比べるときに時給と作業内容を見ます。最低賃金に合わせて時給を上げても、事業所を比べるサイトには改定前の時給が出ていることがあります。
ジョブリウム キャリアは、就労支援事業所を探している人が、地域や最寄り駅、サービスの種類から事業所を探して比べるためのサイトです。事業所のページは WAM NET の公表情報をもとに作られているので、あなたの事業所のページもすでにあるかもしれません。そのページの賃金や作業内容は、ジョブリウムが WAM NET から取り込んだ時点の内容です。その後に WAM NET を更新しても、自動では変わりません。
ページを直せるのは、事業者として無料でアカウントを登録し、そのページを引き継いだ事業所だけです。引き継ぐと、管理画面から次のことができます。まだ載っていない事業所は、新しく登録できます。
- 新しい時給、作業内容、写真を書き足す
- ブログで、受けている仕事や作業の様子を伝える
- 利用を考えている人からの問い合わせを、管理画面のメッセージで受け取り、返信する
利用者を募る方法は、記事「就労支援事業所の利用者が集まらないときの募集方法」に書きました。
ジョブリウム キャリアに、事業所を無料で掲載する

まずはジョブリウム キャリアの事業所検索に事業所名を入れて、いまのページの時給や作業内容がどう見えているかを確かめてください。アカウントの登録も、事業所ページの公開も無料です。
参考
- 地域別最低賃金の全国一覧(厚生労働省) 今年度の47都道府県の最低賃金額、改定前の額、発効日の出典です(令和8年度 地域別最低賃金 全国一覧・PDF)
- 最低賃金法 第4条・第7条・第40条(e-Gov法令検索) 最低賃金以上を払う義務、比べるときに入れない賃金、減額特例、罰則の出典です
- 最低賃金の減額の特例許可申請について(厚生労働省・PDF) 減額特例の対象と、比べるときに入れない手当の例の出典です
- 指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準 第190条・第192条(e-Gov法令検索) 雇用契約、生産活動の収支と賃金総額、給付金を給料に充てない決まりの出典です
- 厚生労働大臣の定める事項及び評価方法の留意事項について(令和7年3月31日最終改正・PDF) 生産活動の6段階と賃金総額の範囲の出典です
- 就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)における留意事項について(令和7年3月31日改正・PDF) 経営改善計画の扱いの出典です
- 就労系サービスに係る報酬・基準について≪論点等≫(障害福祉報酬改定検討チーム 第64回・令和8年9月28日・PDF) 収支が賃金総額を下回る事業所の数と、2027年度改定の検討の方向の出典です
- 就労系障害福祉サービスの利用者の支援ニーズ等の実態把握等に関する調査(令和4年度障害者総合福祉推進事業・PDF) A型の利用者の1日の労働時間の出典です
- 労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針(内閣官房・公正取引委員会・令和8年1月1日改正・PDF) 最低賃金の上昇率を使った価格交渉の出典です
本記事は2026年10月時点の制度と公表資料にもとづいています。表の金額は、最低賃金ちょうどで月80時間働く場合の計算例です。2027年度(令和9年度)の報酬改定で、スコアの項目や配点が変わる可能性があります。
