障害者雇用を検討している企業向けコラム

障害者雇用の面接、障害のことはどこまで聞いていい?|聞いてはいけない14事項と、聞き方を変えれば聞けること

障害者枠の面接で、「病名は何ですか」「ご家族の協力は得られますか」と聞いてよいのでしょうか。

聞いてはいけないことの基本は、一般の面接と同じです。厚生労働省は、本籍・家族・住まいなど、仕事の適性や能力に関係のない14の事項を例に挙げ、応募書類や面接で把握しないよう求めています。障害の状況は、障害者専用の求人の選考で、仕事をするうえで必要な範囲なら確かめてかまいません。そのときは、何のために聞くのかを先に伝えます。

応募書類や面接で把握してはいけないのは、障害者枠でも一般の面接と同じ14の事項

仕事の適性・能力に関係のない事項を把握しないよう求める理由を、厚生労働省は次のように書いています。

「これらの事項は採用基準としないつもりでも、把握すれば結果としてどうしても採否決定に影響を与えることになってしまい、就職差別につながるおそれがあります。」

厚生労働省は、応募者の適性と能力だけで採否を決める「公正な採用選考」を事業主に求めており、その特設サイトで次の14の事項を挙げています。

  • 本人に責任のない事項(4つ):本籍・出生地、家族のこと(職業・続柄・健康・病歴・地位・学歴・収入・資産など)、住宅の状況(間取り・部屋数・住宅の種類・近くの施設など)、生活環境・家庭環境
  • 本来は自由であるべき事項(7つ):宗教、支持政党、人生観・生活信条、尊敬する人物、思想、労働組合への加入や活動歴・学生運動などの社会運動、購読している新聞・雑誌・愛読書
  • 採用選考のやり方(3つ):身元調査、適性・能力に関係のない事項を書かせる応募書類、合理的・客観的に必要とはいえない採用選考時の健康診断

この14は例で、「これらに限られるわけではありません」とも書かれています。ハローワークが令和6年度に把握した、応募者がこうした事項を把握されたという指摘は854件でした。その多くが家族に関することです。

採用選考時の健康診断には、既往歴(これまでにかかった病気)を確かめることや、健康状態の告知書(病気や体調を自分で書いて出す書類)を出させることも含まれます。ここでいうのは、採否を決める選考の段階で行う健康診断です。一律に禁止ではありませんが、仕事の適性と能力を判断するために合理的・客観的に必要な場合を除いて、行わないよう求められています。

障害者枠の面接で出やすいのは、家族と住まいの質問

障害者枠の面接では、本人を気づかうつもりで家族のことを聞いてしまいがちです。たとえば次のような質問です。

  • 「ご家族はあなたの障害のことを知っていますか」
  • 「ご家族の協力は得られますか」
  • 「ご家族に同じ病気の方はいますか」
  • 「一人暮らしですか、ご家族と住んでいますか」

どれも14の事項の「家族に関すること」「生活環境・家庭環境」に入ります。家族の項目には「健康、病歴」が含まれているので、家族の病気を聞くことも対象です。特設サイトは、面接の雰囲気を和らげようとして聞いてしまう例が多いと注意しています。

家族のことを聞きたくなるのは、たいてい「体調を崩したときに、働き続けられるか」を知りたいからです。それなら、本人に勤務時間や休み方の希望を聞きます。次の章の言い換えの表で、具体的な聞き方を挙げています。

障害のことは、仕事に必要な範囲で、聞く理由を先に伝えてから聞く

障害者専用の求人の選考では、障害の状況を確かめること自体は禁止されていません。障害者差別禁止指針(障害を理由にした差別について、厚生労働省が示した指針)は、仕事の能力・適性の判断や配慮のためなど、雇用管理上必要な範囲で、プライバシーに配慮しながら確かめることは差別に当たらないとしています。厚生労働省のQ&Aも「確認すること自体は法違反とならない」と説明しています。

聞き方について、同じQ&Aは次のように書いています。

「公正採用選考の原則に則り、能力・適性を判断するために必要な範囲内で、質問の趣旨及び必要性を明らかにした上で質問していただくことが基本です。」

つまり、「入社後の勤務時間を決めるために伺います」のように、聞く理由を先に伝えます。本人が採用後の配慮を申し出たことを理由に、不利に扱わないことも求められています。

病名そのものは、配慮を決めるのに必ずしも必要ではありません。合理的配慮指針(障害のある人への配慮について、厚生労働省が示した指針)の手続きで、本人が伝えるのは、応募や採用に当たって支障になっている事情と、希望する配慮です。希望する配慮をうまく言えないときは、事情を伝えるだけでもかまいません。

一般の求人に応募してきた人で、障害のことを明かしていない場合は扱いが違います。配慮が必要かを聞くときも、その質問が障害があるかどうかの確認につながらないようにします。

会社から障害の有無を尋ねてよいのは、仕事の目的にどうしても必要な場合だけです。特別な職業上の必要性がある場合などで、その目的を本人に示して尋ねます。

聞いてしまいがちな質問を、こう聞き直す

障害者枠の面接で出やすい質問と、その聞き直し方を表にしました。障害者専用の求人では、病名や障害の状況を、理由を伝えて必要な範囲で確かめることも禁止されていません。右の列は、勤務時間や休み方を決めるのに必要なことに絞って聞くための言い方の例です。

聞いてしまいがちな質問聞き直した質問
病名は何ですか仕事をするうえで、配慮してほしいことはありますか
どんな薬を飲んでいますか勤務時間中に、薬を飲む時間や休憩が必要ですか
病院ではどんな治療をしていますか通院のために、休みや早退が必要になる曜日や回数はありますか
ご家族の協力は得られますか体調を崩したときは、職場にどう連絡してもらうのがよいですか
ご家族と住んでいますか通勤にかかる時間と、無理なく通える時間帯を教えてください
障害者枠の面接で聞いてしまいがちな5つの質問と、勤務時間や休み方を決めるのに必要なことを聞く聞き直し方を並べた図

通院のための時間や休憩は、合理的配慮指針の採用後の配慮の例にも「出退勤時刻・休暇・休憩に関し、通院・体調に配慮すること」として載っています。面接では、勤務時間と休み方を決めるのに関係する範囲で聞きます。

面接官が2人以上いる場合は、表の右の質問を質問リストにして、全員が同じ質問をするようにします。厚生労働省も、質問項目と評価の基準をあらかじめ決めておくよう求めています。

配慮の内容は、本人からの申し出と話し合いで決める

募集と採用のときの合理的配慮は、障害者雇用促進法で、障害のある人からの申し出があったときに講じるものと決められています。手続きは次の3段階です。

  • 本人が、支障になっている事情と、希望する配慮を申し出る(面接日までに時間の余裕をもって申し出ることが求められています)
  • 会社が事情を確かめ、どんな配慮をするかを本人と話し合う
  • 本人の意向を十分に尊重して決める。負担が重すぎて実施できないときは、そのことを伝え、求められたら理由を説明する

表の質問は、勤務時間や休み方を決めるために会社から聞いてよい例です。ただ、採用後の配慮の内容を、面接の場で会社からすべて確かめておくことまでは求められていません。採用が決まったあとは、雇い入れる日までに、職場で支障になっている事情がないかを会社から本人に確かめます。

配慮をしたうえで、能力や適性を判断して採用しなかった場合は、それだけで障害者差別に当たるわけではありません。どこまで配慮すれば義務を果たしたことになるか、断ってよい範囲は、合理的配慮はどこまでやれば義務を果たしたことになるのかの記事で説明しています。

面接の当日にできる配慮の例

合理的配慮指針には、募集と採用のときの配慮の例が障害の種類ごとに載っています。面接に関係するものは次のとおりです。

  • 面接に、就労支援機関の職員などが同席するのを認める(聴覚・言語障害、知的障害、精神障害、発達障害、難病、高次脳機能障害の例)
  • 面接を筆談などで行う(聴覚・言語障害の例)
  • 面接の時間を、体調に合わせて決める(内部障害=心臓・腎臓・呼吸器などの障害、難病の例)
  • 面接や採用試験で、文字でのやりとりや試験時間の延長などを行う(発達障害の例)
  • 面接の会場まで、できるだけ移動が少なくて済むようにする(肢体不自由の例)

これらは例で、すべての会社が必ず行うものではありません。同席する人の例として、厚生労働省の事例集には、ハローワーク・障害者職業センター・障害者就業・生活支援センター(仕事と生活の両方の相談を受ける機関)・本人の出身学校・障害福祉サービスの施設の職員などが挙がっています。同席した人は、本人の障害の特性や必要な配慮を説明したり、面接での受け答えを補ったりします。

本人が自分の意向をうまく伝えられないときは、会社から就労支援機関の職員などに、本人を補ってもらうよう頼んでもかまいません。

手帳の等級などは、採用が決まってから、使い道を伝えて確かめる

雇用率の報告や納付金の申告に使うため、障害者手帳の種類や等級を確かめる必要があります。厚生労働省の「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン」は、これを採用が決まったあとの手続きとして書いています。

確かめるときは、何に使うかを本人に示し、同意を得てから、その目的に必要な情報だけを受け取ります。確認は、人事の担当者が本人に直接行うのが望ましいと書かれています。本人の意思に反して、障害者だと申告させたり、手帳を取るよう求めたりしてはいけません。

報告書のどの欄にどう書くかは、障害者雇用状況報告の書き方の記事で説明しています。

社内で説明するときの根拠は、厚生労働省の求め・職業安定法・障害者雇用促進法の3つ

「聞いてはいけない」の根拠は、1つの法律にまとまっていません。面接官に説明するときは、質問の種類ごとに根拠を分けて伝えます。

  • 14の事項は、厚生労働省が公正な採用選考のために、事業主に守るよう求めているものです。健康診断の項目は「実施しないようお願いします」という書き方です
  • 本籍・出生地・思想や信条・労働組合への加入状況は、職業安定法とその指針で、原則として集めてはいけない個人情報です。特別な職業上の必要性があり、目的を示して本人から集める場合は除かれます
  • 障害を理由に応募や採用から外すこと、障害のない人を優先して採用することは、障害者雇用促進法と差別禁止指針で禁止されています。守られていないときは、国が助言・指導・勧告をできます

雇用の場面での合理的配慮は、平成28年(2016年)4月から障害者雇用促進法で事業主の義務になっています。令和6年(2024年)4月に障害者差別解消法で事業者の合理的配慮が義務になった話とは別の決まりです。会社が自社の従業員や応募者に対して行う配慮は、障害者雇用促進法のほうで決まっています。

本採用にするかを決める前に、期間を区切って雇い入れて試す方法として、障害者トライアル雇用という国の制度もあります。

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面接の前に、任せる仕事を1つ決めておく

面接で「配慮してほしいことはありますか」と聞いても、任せる仕事が決まっていないと、勤務時間や休憩の話を具体的に進められません。面接の前に、社内の仕事を1つ切り出して、その仕事の内容と時間を決めておくと、配慮の話し合いがしやすくなります。

切り出した仕事は、先に就労継続支援A型事業所へ業務委託として出すこともできます。社外の人がその仕事を決めた手順どおりに進められるかを、採用の前に確かめられます。業務委託は雇用率には数えません。

任せる仕事の書き出し方と、障害者雇用の進め方を、貴社の状況に合わせてまとめた資料をお送りします。

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参考

本記事は2026年10月時点の法令と公表資料にもとづいています。法令や指針は変更されることがあります。

この記事の執筆者

中井裕哉

代表|就労継続支援A型事業所 ネクサスリンク

札幌市東区の就労継続支援A型事業所ネクサスリンク代表。飲食店、不動産、店舗開発など、業種の違う仕事を経験してきました。その中で身につけた「仕事は変わっても、経験は持ち運べる」という考えを大切に、一人ひとりの得意を生かして働ける場をつくっています。 現在は、「好きな仕事を楽しくやる」を、テーマに、AIとITの分野を中心に就労A型事業を展開。

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