障害者雇用を検討している企業向けコラム

障害者雇用で新しく仕事を作る必要はない|190人の工場が7つ書き出して3つに絞った表

採る人数は決まっている。止まっているのは、その人に何を任せるかのほうです。

いまある仕事は、どれも誰かの担当になっている。新しく作ろうにも、現場に「余計な仕事を増やすのか」と思われる。専門的な作業ばかりで、切り出せそうなものが思い浮かばない。

この悩みは、企業が挙げる障害者雇用の課題で1位です。厚生労働省の調査で、4つの障害すべてにおいて「会社内に適当な仕事があるか」が最も多く挙げられています。自社だけが行き詰まっているわけではありません。

そして新しく仕事を作る必要はありません。公的機関が示している方法は、いまある職務を細かく書き出して、そこから選ぶことです。この記事では、実際に任されている仕事の上位10と、190人の工場が7つの作業を書き出して3つに絞った整理表を見ていきます。

切り出した業務は、雇う前に事業所へ委託して先に出すこともできます。その業務が回るか、上がってくる成果物が使えるかを見てから、採用するかどうかを決められます。

この悩みは、全国で一番多い

令和5年度の障害者雇用実態調査です。雇用上の課題が「ある」と答えた事業所に、何が課題かを聞いています(4つまでの複数回答)。

障害「会社内に適当な仕事があるか」2番目に多い課題
知的障害79.2%障害者を雇用するイメージやノウハウがない 51.6%
身体障害77.2%職場の安全面の配慮が適切にできるか 47.4%
発達障害76.9%障害者を雇用するイメージやノウハウがない 49.7%
精神障害74.2%障害者を雇用するイメージやノウハウがない 49.6%

4つとも1位が同じです。障害の種類で変わる話ではなく、職務をどう用意するかという一点に集まっています。

実際に任されている仕事の上位10

高齢・障害・求職者雇用支援機構が、15,000事業所へ調査票を送り、2,734件の回答を集めました。いま雇用している、または過去に雇用していた障害者が携わる具体的な職務内容を自由記述で書いてもらい、251の課業等に分類したものです。件数の多い順に並べます。

順位課業等回答例件数
1データ入力データ入力、PCの入力、伝票入力1,520
2書類の整理・管理ファイリング、スキャニング(PDF化)、日報管理1,201
3清掃店舗清掃、応接室の清掃、社内清掃業務1,190
4事務事務職、一般事務、事務全般1,141
5文書等発受郵便物の回収・仕分け・配布、封入、ラベル貼り568
6コピー・印刷書類・資料のコピー、印刷531
7電話・受付業務コールセンター業務、受付・案内業務、電話応対529
8書類・資料の作成DM・名刺等作成、会議資料作成、POP作成499
9製造・加工・組立製造作業、ライン加工、部品の組立438
10会計事務経理、会計、入出金処理252

上位8つは、ほとんどが業種を問わず生じる仕事です。業種特有の作業が出てくるのは9位から。特別な職場を用意した会社だけの話ではありません。

なお件数は「その課業等を挙げた回答の数」です。回答の総数は15,536件で、1事業所が複数を挙げています。人数でも事業所数でもなく、頻度や労働時間の割合までは分かりません。回答の基準日は2021年10月1日で、公表は2024年3月です。

機構は、事務関係の課業等が産業や障害の種類に関わらず多いことを指摘しています。製造業でも小売でも、事務は候補に挙がっているということです。

製造業でも、上位は製造ラインだけではない

同じ調査の、製造業だけを取り出した集計です(2,318件)。

順位課業等件数
1製造・加工・組立357
2データ入力174
3事務165
4清掃129
5試験・検査・実験・解析117
6書類の整理・管理91
7梱包・包装68
8食品加工・食品製造60
9書類・資料の作成59
10システム等開発57

1位はその産業らしい作業です。ただし2位から4位は、データ入力・事務・清掃。製造現場だけを見て「うちには任せられる仕事がない」と判断すると、実際に多く選ばれている領域を見落とすことになります。

仕事の作り方は3つある

機構の調査研究報告書No.133が、職務を作り出す方法を3つに整理しています。

方法やること
切り出し・再構成モデル職場にある定型反復的な作業を探し出し、切り出して再構成する
積み上げモデル限定的な職務から始め、時間をかけて職務の内容と責任の幅を広げる
特化モデル本人の得意分野に合う職務を選び、一部の不得手な作業は担当の見直しや支援の対象にする

1つ目は知的障害者の雇用を契機に考えられたもので、報告書は障害の種類を問わず幅広く有効としています。残る2つは、障害者の持つ多様性をさらに考慮して後から加わった方法です。

この3つは独立したものではなく、組み合わせて使うものとされています。最初は切り出しで始め、慣れてきたら積み上げる、という進め方ができます。

報告書は、切り出しには受け入れ側にも効果があるとしています。介護現場を例に、介護職が担っていた清掃を切り出すと、介護職は本来取り組むべき介護の仕事に専念できるようになる、と書かれています。

190人の工場が、どうやって作業を選んだか

機構のQ&Aに、既存の職務から選んだ企業の事例が載っています。

医療機器の製造業。社員数190人。法定雇用障害者数は4人で、経理部に1人。あと3人を工場で雇うことにしました。専門技能が必要な事務部門で募集を始めたものの人材が確保できず、ハローワークの助言で製造現場へ範囲を広げています。

なおこの事例の「4人」は、いまより低い法定雇用率で計算されたものです。2026年7月から2.7%になったので、190人なら5人(小数点以下は切り捨て)。この事例より1人多い計算になります。

そこで作ったのが、この整理表です。原表には作業内容・時間・頻度・施設設備の欄もありますが、ここでは判断の分かれ目になった要件だけを抜き出しています。

作業名身体負担理解・判断コミュニケーション資格・スキル適否
部品の検品普通必要必要不要
部品収納・ピッキングやや大必要必要不要
配送用の段ボール準備やや大不要不要不要
部品の組立立ち作業必要必要不要
輸入製品の開梱・ラベル貼り・箱詰めやや大不要不要不要
指示書作成の数値入力負担小必要必要パソコン操作
段ボール解体・整理やや大不要不要不要

7つ書き出して、適と判断されたのは3つ。この会社が募集した職務は「輸入製品の開梱・ラベル貼り・箱詰め作業」でした。公表資料に、採用後の経過までは書かれていません。書き出しは募集する職務を決めるところまでの作業で、その業務が実際に回るかどうかは、別に確かめることになります。

選んだ基準も書かれています。

  • 判断要素が少ないこと
  • 納期に縛られないこと
  • 作業内容の変化が少なく、恒常的に作業量を確保できること

3つ目が実務では効きます。繁忙期にしかない仕事を切り出すと、閑散期に手が空きます。量が読める作業を選ぶ、という趣旨と読めます。

なお、この会社は専門技能が必要な事務部門の募集も引き続き行う方針だと書かれています。現場で採ることにしたからといって、事務での採用をやめたわけではありません。

書き出すまでは、判断できない

7つのうち4つは否になりました。作業名だけでは適否は決まりません。身体負担、理解や判断の要否、コミュニケーションの要否、資格やスキルの要否、そして作業の時間と頻度。これらを1行ずつ埋めて、はじめて分かれます。

切り出す作業を決めるための整理表。作業名、身体負担、理解・判断、コミュニケーション、資格・スキル、時間・頻度、適否の7列を1行ずつ埋める。適否を分ける3つの基準は、判断要素が少ないこと、納期に縛られないこと、作業量を恒常的に確保できること。

「うちの現場に切り出せる作業はない」という判断も、書き出してから出したほうが、現場と話すときに使えます。

外に出している仕事も、見直しの対象になる

機構のQ&Aには、こう書かれています。

なお、清掃、ランドリー、社員食堂の運営など、外部委託している業務を含めて見直しを行い、職務内容の選定の検討に加えることも一考です。

すでに外注している業務には、その作業を担っている社員がいません。現場の誰かから仕事を取り上げる形にならないぶん、社内で調整する相手が少なくて済みます。ただし委託先との契約をどうするかは別に決める必要があります。

あわせて、職務内容を障害の種類や程度で先に絞り込まないこと、とも書かれています。専門知識が要らない職務も含めて、力を発揮できる職務を選ぶ。視覚障害のある人が画面読み上げソフトで事務作業に従事している例、知的障害のある人がパソコンで事務作業に従事している例が挙がっています。

機構は、職務内容の検討についてハローワークや地域障害者職業センターの助言を受けるとよい、とも書いています。事業主向けの相談は無料です。ただし予約が要ります。

当社がやっているのは、この手前の部分です

ジョブリウムは、貴社が任せられる業務を整理したうえで、その業務を扱っている就労継続支援A型事業所をご紹介します。加盟している事業所は全国にあります。データ入力や事務のほか、動画編集・SNS運用・システム開発を扱っている事業所もあります。ここに挙げていない業務でもご相談ください。A型事業所は原則として雇用契約を結んで働く場所なので、通っている方には勤怠と業務の実績があります。

採用の前に、その事業所へ業務を委託して、成果物と進め方を先に確かめることもできます。この段階では雇用の義務は発生しません。委託で進め方が見えてから直接雇用に移る、という順番も取れます。

ただし雇用率に算定されるのは雇用を開始した日からで、委託している期間は算定されません。委託費を払っても納付金は減りません。委託は納付金を減らす手段ではなく、採用したあとで「この業務では合わなかった」と分かる事態を避ける手段です。どの業務なら回るかが先に分かっていれば、募集の要件を決めるところからやり直さずに済みます。

当社が求職者をご紹介することはありません。ご紹介するのは事業所です。委託の期間、作業の指示を出すのは事業所です。貴社から作業者へ直接の指示は出しません。直接雇用に移ったあとは、業務の指示を貴社から本人へ直接お出しいただきます(職業安定法44条)。

採用したあと、本人が働く場所と、体調や困りごとを相談する先を社外に置くこともできます(社員サポートオフィス)。福祉の専門職が入社後の相談に対応するので、現場の管理者が本人の体調まで抱える形になりません。在宅勤務の社員も対象です。ご利用は障害のある方に限りません。

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まとめ

  • 「会社内に適当な仕事があるか」は、4つの障害すべてで課題の1位(74.2〜79.2%)
  • 実際に多く挙がっている課業等は、データ入力・書類の整理・清掃・事務。製造業でも2位から4位は同じ
  • 190人の工場は、7つの作業を書き出して3つを適と判断した
  • 選ぶ基準は、判断要素が少ない/納期に縛られない/作業量が恒常的に確保できる
  • 外部委託している業務も、見直しの対象に含めてよい

ここまでは、書き出す前の話です

整理表の作り方も、選ぶときの考え方も、どの会社でも同じです。埋めるのは自社の作業なので、ここは自社にしかできません。

190人の工場が7つ書き出して3つに絞ったように、候補を並べてから消していくだけです。埋めた表を持って、ハローワークや地域障害者職業センターへ相談することもできます。

手間がかかるのは、その先です。切り出した業務を扱っている事業所が、通える範囲にあるか。公表システムや窓口で調べられますが、事業所ごとに何を扱っているかまでは、一件ずつ当たることになります。

任せる業務の切り出しから、貴社の状況に合わせてご説明します

資料には、導入までの流れ、社員サポートオフィスでできること、貴社の想定人数で計算した費用の試算を入れています。そのまま社内で回覧いただける形です。

任せる業務が決まっていない状態でご相談いただいて構いません。入力は1分ほどで、費用はかかりません。お電話番号のご入力は任意です。

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参考

本記事は2026年9月時点の制度と公表資料にもとづいています。

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