体調やメンタルの管理まで手が回らない。人事の方から、よく聞く言葉です。
対応が必要になる場面の多さは、数字にも表れています。厚生労働省の令和5年度障害者雇用実態調査によると、概ね1か月以上休職している方の割合は、精神障害で5.7%。身体障害・発達障害の1.7%、知的障害の0.4%と比べて、はっきり高くなっています。
そして同じ調査で、行政支援があれば雇用したいと答えた事業所(回答した事業所の16.6〜22.3%)が「雇用を促進するために必要な施策」の1位に挙げたのが外部の支援機関の助言・援助などの支援でした。知的・精神・発達の3つで1位です。
身体障害だけは助成制度が1位ですが、そこでも外部の支援機関は2位に入っています。この記事では、何をどこまで社内で見るのか、どこから外に出すのかを整理します。
休職している方の割合は、障害の種類で桁が違う
令和5年6月1日時点の調査結果です。

| 令和5年6月1日時点で概ね1か月以上休職している方の割合 | |
|---|---|
| 精神障害 | 5.7% |
| 身体障害 | 1.7% |
| 発達障害 | 1.7% |
| 知的障害 | 0.4% |
精神障害の5.7%は、知的障害の0.4%の10倍以上です。これは令和5年6月1日というある一日の時点で休職している方の割合で、休職が起きる頻度そのものではありません。休職の長さによっても変わります。
裏を返せば、その時点で休職していない方が94.3%を占めます。過去に休職して復帰した方もここに含まれます。差が出る場面を先に知っておけば、身構える必要は減ります。
企業が実際に行っている配慮
同じ調査で、雇用している障害者への配慮を「している」と答えた事業所の割合と、その中身です。
| 配慮している | もっとも多い配慮 | |
|---|---|---|
| 精神障害 | 63.3% | 短時間勤務等勤務時間の配慮(54.3%) |
| 知的障害 | 61.0% | 能力が発揮できる仕事への配置(51.1%) |
| 身体障害 | 58.7% | 休養への配慮(40.2%) |
| 発達障害 | 38.0% | 休養への配慮(61.2%) |
右の列は、「配慮している」と答えた事業所のなかでの割合です。左の列とは分母が違います。発達障害で38.0%と61.2%が並ぶのは、そのためです。
精神障害では、勤務時間の配慮に次いで「休暇を取得しやすくする、勤務中の休憩を認める等休養への配慮」が50.9%、「通院・服薬管理等雇用管理上の配慮」が49.2%と続きます。
身体・精神・発達では、上位を占めるのは勤務時間・休憩・通院のしやすさです。知的障害だけは1位が「能力が発揮できる仕事への配置」で、仕事の割り当てが先に来ます。
いっぽう「職場内における健康管理等の相談支援体制の確保」は精神障害で22.6%。20項目のうち7〜10位で、勤務時間や休憩への配慮(40〜61%)の半分以下です。
人事がやることと、やらないこと
「体調管理まで手が回らない」と感じるとき、その中身は2つに分かれます。
| 人事の仕事 | 人事の仕事ではない |
|---|---|
| 通院のための休みを取りやすくする | 受診すべきかどうかを判断する |
| 勤務時間や休憩の取り方を決める | 服薬や治療の内容に踏み込む |
| 不調を伝える手順を決めておく | 症状の重さを見立てる |
| 相談できる先につなぐ | 心理的なケアそのものを担う |
右側は、人事の裁量で判断すると危ういところです。社内での説明も担当者に集中しやすい面があります。ここを抱え込むと、担当者の負担が大きくなります。
社内にも受け皿はあります。常時50人以上の労働者を使用する事業場では、労働安全衛生法により産業医の選任とストレスチェックの実施が義務づけられています。医学的な判断は、まずここへ渡すのが筋です。
50人未満の事業場では、扱いが分かれます。健康管理は、医学に関する知識を有する医師その他厚生労働省令で定める者に行わせるよう努める、という努力義務です。省令で定める者には保健師が含まれるので、産業医である必要はありません。ストレスチェックは当分の間の努力義務でしたが、令和10年4月1日から50人未満にも義務化されます。いま準備を始めておく時期にあたります。
法令が定める産業医の職務は9項目に及び、健康相談も含まれます。ただし実際にどこまで関与するかは事業場によって異なります。定期的な関わりとして決まっているのは、原則として月1回(条件を満たせば2か月に1回)の職場巡視と、長時間労働・高ストレス者からの申出にもとづく面接指導です。
知的・精神・発達で1位に挙がったのは、外部の助言
同じ調査で、「雇用を促進するために必要な施策」を複数回答で聞いています。答えているのは「一定の行政支援があった場合に雇用したい」と回答した事業所だけです(統計表の注記による)。その事業所は、回答した事業所の16.6〜22.3%にあたります。公表されている統計表では、すでに雇用しているかどうかで分けた数字は示されていません。
| 1位に挙がった施策 | 割合 | |
|---|---|---|
| 精神障害 | 外部の支援機関の助言・援助などの支援 | 62.5% |
| 発達障害 | 外部の支援機関の助言・援助などの支援 | 62.5% |
| 知的障害 | 外部の支援機関の助言・援助などの支援 | 59.4% |
| 身体障害 | 雇入れの際の助成制度の充実 | 63.0% |
身体障害だけ助成金が1位ですが、それでも外部の支援機関は58.3%で2位です。精神と発達では4ポイント以上の差、知的では1.7ポイント差で、外部の支援機関がわずかに上回っています。
この設問は体調やメンタルについて聞いたものではありません。ただ、選択肢のなかで最も多く選ばれたのが外部の支援機関だった、ということです。
まず使える公的な窓口

事業主が相談できる窓口があります。はじめの3つは障害者雇用の窓口、あとの2つは労働安全衛生の窓口です。有料のサービスを検討する前に、ここで足りるかを確かめる順序が現実的です。
- 地域障害者職業センター 各都道府県に設置。事業主向けの相談窓口があり、利用料は無料です。障害のある方と事業主の双方の同意を得て支援計画を作り、職場へ支援員を派遣する事業も行っています(制度の正式な名称はリンク先をご覧ください)
- 障害者就業・生活支援センター 全国340か所(令和8年4月現在)。事業所への助言のほか、職場や家庭への訪問、生活面の支援まで行います。雇用の継続や職場定着の場面では、知的・精神・発達で連携先の1位です
- ハローワーク 募集・採用の場面では4つの障害すべてで連携先の1位ですが、雇用の継続や職場定着の場面で1位なのは身体障害だけです
- 地域産業保健センター 労働者50人未満の事業場向けです。メンタルヘルスを含む健康相談と個別訪問指導を、原則として無料で受けられます
- 産業保健総合支援センター 47都道府県に設置。事業場の規模を問わず、人事労務担当者からの相談に原則として無料で応じます。上の地域産業保健センターは、このセンターの地域窓口にあたります
ただし、雇用の継続や職場定着で関係機関(学校や医療機関を含む)を利用したことがある事業所は、全体の6.4〜9.4%です。この「全体」は調査の言葉づかいをそのまま引いています。
また、支援員の派遣は標準で2〜4か月(状況により1〜8か月)の期間を定めて行うものです。原典にも「永続的に実施するものではなく」と書かれています。
社外に居場所を置くという選択
当社がご提供しているのは、雇用された社員の方が使える社外のオフィスです。作業スペースがあり、相談できる職員がいます。体調が揺れたとき、業務の進め方に迷ったとき、その日のうちに話せる場所を社外に持っておく、という考え方です。
ご利用は障害のある方に限りません。休職から戻ってきた社員、体調に不安のある社員。誰でも使える福利厚生として置いておくと、特定の人だけの制度になりません。
当社が求職者をご紹介することはありません。ご紹介するのは事業所です。業務の指示は、貴社から本人へ直接お出しいただきます(職業安定法44条)。
あわせて読みたい
- 障害者雇用は本当に続かないのか 勤続年数と定着率、法令上の義務、公的窓口を整理しています
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まとめ
- 令和5年6月1日時点で概ね1か月以上休職している方の割合は精神5.7%・身体1.7%・発達1.7%・知的0.4%
- 精神障害の5.7%は知的障害の10倍以上。ただしこれはある時点で休職中の割合で、発生率ではない
- 実際にしている配慮の上位は、身体・精神・発達では勤務時間・休憩・通院のしやすさ。知的では仕事の割り当て
- 体調そのものを判断することは、人事の仕事ではない
- 行政支援があれば雇用したいと答えた事業所(回答した事業所の16.6〜22.3%)が挙げた施策の1位は、知的・精神・発達で「外部の支援機関の助言・援助などの支援」。身体は助成制度が1位
- 公的な窓口が5つある。障害者雇用の窓口が3つ、労働安全衛生の窓口が2つ
- 雇用継続・職場定着で関係機関を利用したことがある事業所は全体の6.4〜9.4%
自社に当てはめると、どこが詰まりそうか
ここまで挙げたのは全国の数字です。実際にどこで止まるかは、受け入れる部署の人数と、任せる業務の性質で変わります。
日々の様子を見られる人が近くにいる職場と、そうでない職場では、必要な体制がまったく違います。「うちの場合はどうか」は、この記事では答えが出ません。
障害者雇用の進め方を、貴社の状況に合わせてご説明します

資料では、受け入れの流れ、社員サポートオフィスでできること、費用の考え方をまとめています。そのまま社内で回覧いただける形にしてあります。
入力は1分ほどで、費用はかかりません。お電話番号のご入力は任意です。
参考
- 令和5年度障害者雇用実態調査 結果報告書(厚生労働省・PDF) 休職の状況・配慮事項・必要な施策の出典です。常用労働者5人以上の民営事業所が対象で、障害者数は復元推計値です
- 同 統計表 表5-1〜5-16(e-Stat) 各表の分母(「〜と回答した事業所のみ」)はこちらの注記でしか分かりません
- 障害者就業・生活支援センターの概要(厚生労働省・PDF) 340か所の出典です
- 支援計画の作成と支援期間(高齢・障害・求職者雇用支援機構) 双方の同意・標準2〜4か月の出典です
- 地域障害者職業センター(事業主支援)のご案内(PDF) すべての支援が無料であることの出典です
- ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策(厚生労働省) 令和10年4月からの50人未満への義務化の出典です
- 労働安全衛生法施行令 第5条(e-Gov) 産業医の選任が常時50人以上の事業場である根拠です
- 労働安全衛生法 第13条の2・附則第4条(e-Gov) 50人未満の努力義務と、ストレスチェックの「当分の間」の根拠です
- 労働安全衛生規則 第14条・第15条・第15条の2(e-Gov) 産業医の職務9項目、職場巡視の頻度、保健師の根拠です
- 産業保健総合支援センター(こころの耳・厚生労働省) 原則として無料であることの出典です
本記事は2026年9月時点の公表データにもとづいて作成しています。
