「辞めます」と言い出しにくい。辞めたら受給者証を取り上げられるのではないか。この2つは、辞められない理由にはなりません。就労継続支援(A型・B型)も就労移行支援も、辞めるのも別の事業所に移るのも自由です。受給者証は市区町村があなたに出したもので、事業所に返すものではなく、有効期間内ならそのまま次の事業所で使えます。同じ種類(B型からB型など)に移るなら新しい事業所と契約するだけで、原則、役所での手続きはありません。種類を変えるとき(B型からA型など)と、別の市区町村に引っ越すときは、市区町村に申請します。
順番は「次の事業所を見学して決めてから、いまの事業所に伝える」です。見学に受給者証は要らず、いまの事業所に「ほかを見ている」と言う必要もありません。先に辞めると、収入と通う場所の空白ができます。A型は雇用契約なので退職の申し出が要り、期間を決めていない契約なら申し出から2週間で辞められます。B型と就労移行支援は利用契約の解約で、事業所に伝えれば終わります(契約書の申し出期限は確認してください)。この記事では、辞め方、移り方、辞めると言いにくいときの相談先、事業所が閉まるときの順に書きます。
辞め方:B型・就労移行支援は「契約の解約」、A型は「退職」
B型・就労移行支援
事業所と結んでいるのは利用契約なので、辞めるときは事業所に「◯日で終わりにしたい」と伝えます。契約書に解約の申し出の期限(1か月前など)が書いてあることがあるので、契約書を見てください。辞めた日は受給者証の事業者記入欄に書かれ、事業所が市区町村に報告します。原則、本人が市区町村で何かをする必要はありません(月の途中で別の事業所に移って利用料の上限を超えそうなときの届出と、引っ越しは別です)。
A型
A型は雇用契約なので、辞めるときは会社を辞めるのと同じで、退職の申し出をします。期間を決めていない契約なら、申し出から2週間で辞められます。1年などの期間を決めた契約でも、体調などやむを得ない事由があれば途中で辞められます(どちらも民法の決まりです)。就業規則に「1か月前まで」と書いてあることがあるので、余裕をもって伝えるのが無難です。
6か月以上続けて働き、決められた日の8割以上出勤していれば有給休暇があるので(労働基準法第39条)、辞める前に使えます。週5日なら10日で、週4日以下かつ週30時間未満の人は少なくなります。雇用保険に入っていた人は、退職時に頼めば離職票が出ます。離職前2年間に雇用保険に12か月以上入っていた人は失業給付(基本手当)の対象です。障害者手帳などで確認できる障害のある人は「就職困難者」の扱いになり、給付日数が一般の退職者よりかなり長くなります(手帳がない人はハローワークで相談してください)。たとえば30歳で1年以上働いた人なら300日分(一般の自己都合退職で加入10年未満なら90日)です。45歳以上65歳未満なら360日、解雇や体調が理由なら、加入6か月以上1年未満でも150日あります。体調が理由の退職は、加入6か月以上でも対象になることがあるので、ハローワークで離職の理由をそのまま伝えてください。
移り方:同じ種類なら受給者証そのまま、種類を変えるなら申請
同じ種類の別の事業所へ(B型→B型、A型→A型)
受給者証の有効期間内なら、新しい事業所と契約するだけです。受給者証に書かれた月の上限日数の範囲で契約し、新しい事業所が受給者証に記入して市区町村に報告します。原則、本人が役所に行くことはありません。相談員(相談支援事業所)がついている人は、利用計画を直してもらいます。
例外は主に2つです。有効期間が切れそうなときは、期限までに市区町村で更新すること。引っ越しで別の市区町村に移るときは、転出で受給者証の効力が終わるので、転入先で申請し直すこと(グループホームや施設に入るための引っ越しは、元の市区町村のままです)。月の途中で移って利用料の上限額管理が要るときの届出は、下の「よくある質問」に書きました。就労移行支援から別の就労移行支援に移るときは、標準2年の利用期間は原則として続きから数えます(いったんやめて期間が空いたあとは市区町村の判断です)。
種類を変える(B型→A型、A型→就労移行支援など)
市区町村の窓口に、新しい種類で申請します。行き先ごとに違いがあります。
- B型→A型:雇用契約を結んで働けるかを見るため、原則として最長2か月のお試し期間があります(暫定支給決定。就労移行支援や就労選択支援のアセスメントが引き継がれれば省略されることもあります)。A型は原則65歳未満です。令和9年4月以降は、新しくA型を使う人も就労選択支援を受ける予定です(詳しい扱いは国が改めて示すとしています)
- A型・B型→就労移行支援:標準2年の訓練で、原則65歳未満。どちらからも移れ、こちらも原則2か月以内のお試し期間があります
- A型・就労移行支援→B型:令和7年10月からは、先に就労選択支援(短い作業体験と面談)を受けるのが原則です。50歳以上の人、障害基礎年金1級の人、以前に働いていて年齢や体力の面で一般の会社が難しくなった人は不要。近くに事業所がない、または順番待ちになるときは、従来どおり就労移行支援事業所などのアセスメントで利用できます

順番:見学と面接を先に。辞めるのは決まってから
次の事業所の見学には受給者証は要りません。いまの事業所に通いながら、休みの日や午後に2〜3か所見て、A型なら面接まで受けて、決まってからいまの事業所に伝えます。B型も就労移行支援も、見学や数日の体験を受け付けている事業所があるので、体験の扱いは事業所に聞いてください(体験には受給者証が要る場合があります)。
いまの事業所に「ほかを見ている」と言わなくてかまいません。言いにくければ、見学は自分だけで動いて、決まった時点で伝えれば足ります。ただ、相談支援事業所がついている人は、先に相談員に話しておくと、計画の変更と新しい事業所とのやり取りを一緒に進めてもらえます。

辞めると言いにくい、引き止められる、辞めさせてもらえないとき
辞める理由を詳しく言う義務はありません。「体調に合わせて別の事業所にします」で足ります。「辞めるなら受給者証を返して」「うちを辞めたら他は使えない」という説明は誤りで、受給者証は市区町村が本人に出したもので、事業所のものではありません。
A型で「辞めさせない」「退職届を受け取らない」と言われても、期間を決めていない契約なら申し出から2週間で終わります。逆に、事業所の都合で辞めさせられるときは、30日前の予告か30日分以上の平均賃金の支払いが必要で(労働基準法第20条)、理由を書いた証明書を求めることができます(第22条)。
困りごとで分けると、持っていく先は3つです。
- 「辞めさせてもらえない」「受給者証を返せと言われた」→ 受給者証を出した市区町村の障害福祉の窓口。「事業所を辞めたいのに引き止められている」の一言で足ります
- 事業所の対応そのものに苦情を言いたい → 都道府県の社会福祉協議会にある運営適正化委員会(福祉サービスの苦情窓口。全国社会福祉協議会のリンク集から、お住まいの都道府県の社会福祉協議会のサイトで探せます)
- A型の給料が払われない・解雇予告手当が出ない → 労働基準監督署(解雇に納得できないときは、都道府県労働局の総合労働相談コーナー)
相談員(相談支援事業所)がついている人は、まずそこに話せば、上の窓口につないでもらえることが多いです。
事業所が閉まるとき
A型の事業所が閉鎖や事業の縮小で利用者を解雇するときも、30日前の予告か予告手当が要ります。解雇なら、離職前1年間に雇用保険に6か月以上入っていれば失業給付の対象で、会社都合の退職は自己都合より早く給付が始まります。受給者証はそのまま有効なので、別のA型を探して契約すれば続けられます(B型に変えるなら申請が要り、原則として就労選択支援が先です)。事業をやめる事業所には、続けて利用したい人のために他の事業所との連絡調整をする義務があります(総合支援法第43条)。令和6年度にはA型で少なくとも7,292人(1か月に10人以上の解雇があった事業所の分)が解雇され、その後の行き先(令和7年4月末時点)を見ると、約8割にあたる6,005人は、再就職が決まったか(別のA型1,573人、A型以外の会社など598人)、B型などへ移った・移る予定(3,834人)で、求職中が856人、未定などが431人でした。閉鎖の兆しの見方はA型事業所は来年もある?に書いています。

よくある質問
辞めてから次を探すと、受給者証はどうなる?
有効期間まではそのまま有効です。通っていない期間があっても、それだけで失効することはなく、期限が来る前に市区町村で更新すれば続けて使えます。取り消しは、市区町村が「支援が必要なくなった」と判断したときの決まりで、次を探している間に自動で起きるものではありません。ただ、収入と居場所の空白ができるので、見学と面接を先に済ませるほうが楽です。
辞めた月の利用料は?
基本的には通った日の分だけです。課税世帯で上限まで払っていた人も、辞めた月は通った日数分で計算されます。同じ月に2つの事業所を使ったときは、合計が月の上限を超えないように調整する仕組み(上限額管理)があり、上限額管理をする事業所(多くは新しい事業所)と届出書を作って市区町村に出します。
A型を辞めてB型に移りたい。就労選択支援は要る?
原則として要ります。受けなくてよいのは、50歳以上の人、障害基礎年金1級の人、以前に働いていて年齢や体力の面で一般の会社が難しくなった人です。A型での勤務も就労経験に入ります(厚生労働省の資料に明記されています)。年齢や体力の面で一般の会社が難しくなった、に当たるかを窓口が見るので、申請のときに「A型で◯年働いて、体力の面で難しくなった」と伝えてください。当たらなくても、就労選択支援は短い作業体験と面談で、その結果を持ってB型に申請できます(見学は先にしてかまいません)。
辞めた理由が「合わなかった」だけでも大丈夫?
大丈夫です。事業所を変える理由に決まりはなく、同じ種類に移るなら、市区町村に理由を審査されることもありません。次の事業所の見学で「前はどんな作業が合わなかったか」を話せると、合う仕事を一緒に探してもらいやすくなります。
あわせて読みたい
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- 就労継続支援の利用料はいくら?0円になる人の条件 上限の区分と、1日いくらかかるかはこちら
まとめ
- 辞めるのも移るのも自由。受給者証は有効期間内ならそのまま次の事業所で使える
- B型・就労移行支援は利用契約の解約(契約書の期限を確認)。A型は退職の申し出で、期間を決めていない契約なら2週間で辞められる
- 同じ種類の別事業所へは新しい契約だけ。種類を変えるときは市区町村に申請(B型へは原則、就労選択支援が先)
- 順番は、見学・面接を先に、決まってからいまの事業所に伝える。理由を詳しく言う義務はない
- 引き止め・解雇・給料の相談先は、市区町村の窓口、相談支援事業所、運営適正化委員会、労働基準監督署
- A型を辞めたら、雇用保険に一定期間入っていた人は失業給付の対象。手帳などで確認できる障害のある人は給付日数が長い
ここまでは、手続きの話です
手続きは誰でも同じですが、「次にどこへ行くか」は人によって違います。同じB型でも、作業の中身も職員の人数も通える時間も事業所ごとに違い、前の事業所で合わなかったことが次では気にならない、ということはよくあります。辞める前に、通える範囲にどんな事業所があるかだけ見ておくと、辞める判断そのものが楽になります。
次の就労継続支援の事業所を、辞める前に見ておく

見学に受給者証は要りません。いまの事業所に伝える必要もありません。ジョブリウムで市区町村か最寄り駅で絞って、事業所ページの「仕事内容」を見比べてください。工賃(A型は賃金・給与)が載っている事業所は、その欄も比べられます。気になった2〜3か所に見学を申し込めば、それで十分です。
参考
- 介護給付費等に係る支給決定事務等について(事務処理要領)(厚生労働省・PDF) 受給者証の事業者記入欄、決定支給量の範囲での契約、契約内容の報告、種類を変えるときの支給決定、暫定支給決定の出典です
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(e-Gov法令検索) 第25条(支給決定の取消し)と第43条第4項(事業をやめる事業者の連絡調整の義務)の出典です
- 民法(e-Gov法令検索) 第627条(期間の定めのない雇用は申し入れから2週間で終了)、第628条(やむを得ない事由による解除)の出典です
- 労働基準法(e-Gov法令検索) 第20条(解雇の予告)、第22条(退職時等の証明)、第39条(年次有給休暇)の出典です
- 雇用保険法(e-Gov法令検索) 第13条(受給資格)、第22条(就職が困難な人の所定給付日数150日・300日・360日)の出典です
- 社会福祉法(e-Gov法令検索) 第83条(運営適正化委員会)の出典です
- 「就労選択支援の実施について」の一部改正について(厚生労働省・令和7年9月30日・PDF) B型の利用前の就労選択支援、受けなくてよい人、令和9年4月以降の予定の出典です
- 就労系障害福祉サービスの概要(厚生労働省・PDF) B型の対象者「企業等や就労継続支援事業(A型)での就労経験がある者であって、年齢や体力の面で雇用されることが困難となった者」の出典です
- 都道府県・指定都市社会福祉協議会のリンク集(全国社会福祉協議会) 運営適正化委員会を置く各都道府県の社会福祉協議会への入口です
- 就労継続支援A型の状況について(厚生労働省・社会保障審議会障害者部会 第147回 参考資料9・PDF) 令和6年度の解雇7,292人(1か月に10人以上の解雇があった事業所の分)と、その後の行き先(令和7年4月末時点)の出典です
本記事は2026年9月時点の制度と公表資料にもとづいています。契約の解約の期限や有給休暇の日数は事業所ごとの契約書・就業規則で決まるので、手元の書類で確認してください。ジョブリウムの掲載件数は2026年9月16日時点です。
