障害者向けコラム

A型事業所は来年もある?解雇7,292人の年に、閉鎖した9割に共通していたこと

A型事業所は、令和6年3月から11か月で263か所減りました。いま通っている人も、これから選ぶ人も、続く事業所を見分ける方法があります。

令和6年度(2024年度)、A型事業所から解雇された人は7,292人でした。ハローワークが把握した障害者の解雇9,312人のうち、約8割がA型です。それまでの最多は2001年度の4,017人だったので、1年で2倍以上に塗り替わりました。

一方で、令和7年2月の時点でも4,371か所のA型が運営を続けています。厚生労働省の資料によると、1か月に10人以上を解雇した事業所の約9割は「生産活動収支が赤字」でした。仕事で稼いだお金で、利用者の給料を払えていなかった事業所です。

これは、事業所が公表している「スコア表」で分かります。この記事では、その表のどこを見るか、通っている人とこれから選ぶ人それぞれが何をすればいいか、閉鎖されたら何が起きるかを書きます。

9年間増え続けた事業所が、初めて減った

A型事業所の数は、平成27年3月の2,668か所から令和6年3月の4,634か所まで、9年間一度も減らずに増えてきました。それが令和6年3月から11月にかけて減り、その後は4,370〜4,380か所前後で推移しています。

就労継続支援A型事業所数の推移。平成27年3月の2,668か所から令和6年3月の4,634か所まで9年間増え続け、令和6年7月に4,472か所、令和7年2月に4,371か所へ減少。11か月で263か所の純減。出典は厚生労働省・国保連データ。

令和6年3月から令和7年2月までの11か月で、事業所が263か所、利用者が90,106人から84,808人へ5,298人減りました。263という数字は新しくできた事業所と閉鎖した事業所の差し引きなので、閉鎖の実数はこれより多くなります。

解雇は令和6年度に入ってから毎月数百人の規模で出ていて、5月の1,241人がピークです。なお7,292人という数字は、各月に10人以上の解雇が出た事業所の分です。少人数ずつ辞めさせた事業所は入っていないので、実際はこれより多い可能性があります。

障害者の解雇全体(ハローワーク届出ベース)は、令和6年度の9,312人から令和7年度は3,692人に減りました。ただし改定前の令和5年度は2,407人だったので、波は収まっても、以前の水準には戻っていません。令和7年度のA型の内訳は公表されていません。

なぜ起きたか。給付金で給料を払えなくなった

令和6年4月から、仕事で稼げていない事業所ほど、国からの報酬が減るようにルールが変わりました。給付金で給料を払っていた事業所は、その給付金が減ったので回らなくなった。これが閉鎖の仕組みです。

A型には、もともと「仕事で稼いだお金から経費を引いた残りで給料を払う」というルールがあります(指定基準 第192条)。同じ条文には、原則として給料を給付金で払ってはいけない、とも書かれています。ところが実際には、それができていない事業所が多くありました。

報酬は「スコア方式」で、運営状況を点数にした合計で単価が決まります。令和6年度の改定で変わった項目のうち、この記事に関係する2つを挙げます。

項目改定前改定後
生産活動(過去3年の収支)5〜40点−20〜60点
経営改善計画(新設)0点か−50点

改定前は、どれだけ赤字でも最低5点はもらえました。改定後は、前年度と前々年度の両方が赤字ならマイナスです。さらに、赤字の事業所が出すよう求められる経営改善計画を期日までに出していない場合は、50点の減点です。

最低賃金が上がるたびに、圧力は強くなる

A型は雇用契約を結ぶので、原則として最低賃金以上を払う義務があります。その最低賃金が、2年続けて記録的に上がっています。

年度全国加重平均引上げ額発効
令和7年度1,121円+66円(過去最大)令和7年10月〜
令和8年度1,177円+56円(過去2番目)令和8年10月1日〜12月2日に順次(予定)

仕事で稼げている事業所は吸収できます。稼げていない事業所には、赤字が広がる方向にしか働きません。大きな波は一度過ぎましたが、稼げていない事業所がゼロになったわけではありません。令和8年10月に最低賃金が上がると、そういう事業所の赤字はまた広がります。

危ない事業所かどうかは、スコア表で分かる

A型事業所には、自分の運営状況を点数にしてインターネットなどで公表する義務があります(指定基準 第196条の3)。年1回以上。事業所のホームページか、WAM NETの障害福祉サービス事業所検索に載っています。

スコア表は2枚組で、1枚目が点数、2枚目が実績です。見るのは2枚目の「生産活動」の欄。前年度の「生産活動収入から経費を除いた額」「利用者に支払った賃金総額」「収支」が円単位で載っています。

2枚目の「収支」意味
前年度がマイナス仕事で稼いだお金で給料を払えていない。1か月に10人以上を解雇した事業所の約9割がこの状態
前年度がプラス仕事で稼いだお金で給料を払えている

1枚目の点数で見る場合は、生産活動の欄が40点以上なら前年度は黒字、20点なら前年度は赤字、−10点か−20点なら2年続けて赤字です。経営改善計画の欄が−50点なら、赤字なのに計画を期日までに出していません。

スコア表が見つからない場合は、事業所に「スコア表を見せてください」と言えます。開設から間もない事業所(初年度と、年度の途中に開設した場合は2年度目まで)を除いて公表は義務なので、見せられない理由は本来ありません。見せてもらえなければ、それ自体が判断材料です。

スコア表以外で分かること

  • 仕事の中身。企業から受注した仕事があるか、それとも内職のような軽作業だけか。単価の低い作業だけで最低賃金を払い続けるのは難しい
  • 仕事がない日。「今日は作業がないので座っていて」という日が増えていないか
  • 労働時間の短縮。契約の勤務時間が減った、シフトが削られた
  • 職員の入れ替わり。支援員が短期間で次々に辞めている

1つ当てはまるだけなら、たまたまかもしれません。前年度の収支がマイナスで、かつ仕事がない日が増えているなら、次を考え始める時期です。

閉鎖されたら、何が起きるか

A型は原則として雇用契約なので、閉鎖は「解雇」です。事業廃止による解雇は会社都合の扱いになり、自己都合退職に付く給付制限の期間がありません(7日間の待期はあります)。雇用保険に入っているのは週20時間以上の契約の人で、給付には離職前1年間に6か月以上の被保険者期間が要ります。手続きはハローワークで、令和6年3月以降は解雇された利用者向けの集団受付や説明会も行われています。

事業所の側にも義務があります。障害者総合支援法の第43条第4項は、廃止する事業所に対して、利用を続けたい人が他の事業所で続けられるよう連絡調整することを求めています。「明日から来なくていい」で終わらせてよい制度ではありません。

実際に、令和6年度にA型を解雇された7,292人がその後どうなったか。令和7年4月末時点の数字です。

その後人数
再就職が決まった2,171人(うち別のA型事業所 1,573人)
B型事業所などへ移った・移る予定3,834人
求職中856人(うちハローワークで支援中 833人)
その他(意向未定・再就職の希望なし等)431人

いちばん多いのはB型などへの移行、3,834人(予定を含む)です。B型は雇用契約がないので、A型の給料(令和6年度の平均は月91,451円)から、B型の工賃(同じく月24,141円)に変わります。B型にはB型の良さがありますが、収入の面では大きな差です。なお令和7年10月から、B型を新しく使う場合は原則として先に就労選択支援を受ける形になっています。

別のA型に移れた人は1,573人。全体の2割です。閉鎖が決まってから探すと選べる範囲が狭くなるので、この2割に入るには、決まる前に候補を知っておくことが要ります。

閉鎖される前に、できること

通っている人と、これから選ぶ人で、やることが少し違います。

いま通っている人

1つ目は、自分の事業所のスコア表を見ること。前年度の収支がプラスなら、1か月に10人以上を解雇した事業所の9割とは違う状態です。マイナスなら、次を考え始めてよい時期です。

2つ目は、通える範囲に他のA型が何か所あるかを知っておくこと。いま通っている事業所に不満がなくても、候補を2〜3か所知っているだけで、閉鎖されたときの選択肢が変わります。見学は受給者証がなくても行けますし、通っている事業所を辞める必要もありません。

これから選ぶ人

順番を1つ足すだけです。候補を出す → スコア表を見る → 見学に行く。スコア表は事業所のホームページかWAM NETにあります。

見つからなければ、見学を申し込むときに「スコア表を見せてください」と書けば足ります。対面で聞く必要はありません。開設から間もない事業所を除いて公表は義務なので、見せられない理由は本来ありません。見せてもらえなければ、それが答えです。

A型は、原則として最低賃金以上の給料で働ける場所です。続く事業所を選べば、その給料が続きます。前年度の収支がマイナスの事業所は、条件が良く見えても候補から外したほうが安全です。

あわせて読みたい

まとめ

  • 令和6年度、A型事業所から7,292人が解雇された。障害者の解雇全体9,312人の8割
  • 1か月に10人以上を解雇した事業所の約9割は、生産活動収支が赤字。仕事で稼いだお金で給料を払えていなかった
  • 原因は令和6年度の報酬改定。2年続けて赤字なら減点、経営改善計画を期日までに出さなければ50点減点
  • 最低賃金は2年続けて記録的に上昇。令和8年10月にまた上がり、稼げていない事業所の赤字が広がる
  • 事業所のスコア表は公表が義務。2枚目の「前年度の収支」がマイナスかどうかを見る
  • 障害者の解雇全体は令和7年度に3,692人(前年度9,312人)へ減ったが、改定前の2,407人には戻っていない
  • 解雇された人の行き先で最多はB型などへの移行。別のA型に移れた人は2割
  • 通っている人は自分の事業所のスコア表を見る。これから選ぶ人は、候補→スコア表→見学の順で

ここまでは、全国の数字です

解雇の人数も、減点の仕組みも、全国共通の話です。ここから先は、自分の地域の話になります。通える範囲にA型が何か所あって、そのうち前年度の収支がプラスなのはどこか。これは全国の数字では分かりません。

同じ市内でも、仕事で稼いで黒字の事業所と、給付金で回している事業所が並んでいます。看板や求人票を見ただけでは区別がつきません。スコア表を見るまでは。

通える範囲のA型・B型事業所を、閉鎖される前に探しておく

ジョブリウムでは、都道府県と最寄り駅から、A型・B型・就労移行支援の事業所を出せます。ジョブリウムに登録している事業所には、サイトのメッセージで「スコア表を見せてください」と送れます。登録していない事業所には、事業所の電話や問い合わせフォームで同じ質問ができます。

一覧は登録なしで見られます。メッセージを送るときだけ、無料の登録が要ります。通っている人は辞める必要がなく、これから選ぶ人は受給者証がなくても見学に行けます。候補を2〜3か所、名前だけでも知っておく。それだけで、閉鎖が決まってから慌てて探すのとは選べる範囲が変わります。

通える範囲のA型・B型事業所を探す

参考

本記事は2026年9月時点の制度と公表資料にもとづいています。

お住まいの地域の就労支援事業所を探せます

時給や仕事の内容を見て、気になった事業所に見学を申し込めます。見学に受給者証は要りません。

事業所を探す
就労支援の事業所を探す