採用しても続かないのではないか。障害者雇用を検討するときに、よく聞く懸念です。
この記事で使う指標は2つあり、障害によっては、どちらを見るかで順位が入れ替わります。平均勤続年数でいえば発達障害がもっとも短く5年1か月。ところが就職後1年の定着率でみると、発達障害は71.5%で4つの障害のうちもっとも高くなります。
指標を選び違えると、判断も間違えます。この記事では2つの数字を並べたうえで、実際に手が要る場面と、社内・社外にどんな受け皿があるかを整理します。
平均勤続年数と定着率は、順位が入れ替わる
左が厚生労働省の令和5年度障害者雇用実態調査(令和5年6月時点の在職者)、右が障害者職業総合センターの調査(平成27年7〜8月の就職者を1年追跡)です。8年ずれた別の調査である点にご注意ください。
| 平均勤続年数 (令和5年度) |
就職後1年の定着率 (平成27年就職者・A型を除く一般企業) |
|
|---|---|---|
| 身体障害 | 12年2か月 | 60.8% |
| 知的障害 | 9年1か月 | 68.0% |
| 精神障害 | 5年3か月 | 49.3% |
| 発達障害 | 5年1か月 | 71.5% |
身体障害は勤続年数が最長ですが、1年定着率では4つのうち3番目です。発達障害はその逆で、勤続年数は最短なのに定着率は最高。身体と発達では、勤続年数と定着率で順位が逆になります。知的障害はどちらも2位、精神障害はどちらも下位です。
なぜ逆になるのか
平均勤続年数は、いま在職している人の在職期間です。辞めた人は数に入りません。加えて調査結果の概要には、こう注記があります。
平均勤続年数は、勤続年数の短い新規の雇用者の構成割合が増えると、短くなる。
発達障害の雇用者数は、前回調査の3万9,000人から9万1,000人へ2.33倍に増えました。新しく入った人が多いほど平均は下がります。勤続年数の短さは、必ずしも続かなさを意味しません。
もうひとつ、勤続年数の起点にも注意が要ります。採用後に身体・精神・発達障害があると分かった方は、会社がそれを承知した年月が起点になります。雇入れより後になるので、実際の在籍期間より短く計上されている可能性があります。身体障害では34.2%が採用後に該当した方です。一般労働者の勤続年数とは定義が違うため、単純には比べられません。
求人の出し方で、定着率に最大40ポイント近い差がある
上の障害別の定着率は、就労継続支援A型を除く、一般企業へ就職した方(3,273人)の数字です。調査対象全体(5,015人)を求人の出し方で分けると、こう変わります。

| 就職後1年の定着率 | |
|---|---|
| 障害者求人 | 70.4% |
| 就労継続支援A型の求人 | 67.2% |
| 一般求人・障害を開示 | 49.9% |
| 一般求人・障害を開示せず | 30.8% |
障害者求人で就職した場合、障害別の1年定着率は身体70.4%・知的75.1%・精神64.2%・発達79.5%です。先ほどの表の精神障害は49.3%でしたが、障害者求人に限ると64.2%と高くなります(標本数は身体696・知的409・精神618・発達200)。
ハローワークに障害者求人として申し込む場合の数字です。一般求人に障害を開示して採用するケースは、表の3行目(49.9%)です。
この調査には、原典が挙げる留意点が2つあります。就職先企業における職場定着への配慮や工夫の有無は分からないこと、調査時期を7〜8月に設定したため年度当初の新規学卒者の就職状況が反映されていないことです。学校を連携先に挙げる事業所が多い障害では、数字が変わる可能性があります。
それでも精神障害は下位
障害者求人に限っても、精神障害の64.2%は4つのうちもっとも低い数字です。勤続年数も5年3か月で下から2番目。2つの指標がそろって下位なのは精神障害だけです。
精神障害者が雇用義務の対象に加わったのは平成30年4月です(実雇用率へのカウント自体は平成18年から可能でした)。制度としての歴史は浅い分野です。
法令で決まっている事業主の義務が4つあります
「何をどこまでやればよいか」の下限は、障害者雇用促進法と施行規則に書かれています。

| 内容 | 条文 | |
|---|---|---|
| 合理的配慮の提供 | 障害の特性に配慮した措置を講じる。過重な負担になる場合を除く | 第36条の3 |
| 本人の意向の尊重 | 配慮の内容について、障害者の意向を十分に尊重する | 第36条の4第1項 |
| 相談体制の整備 | 配慮に関する相談に応じ、適切に対応するために必要な体制を整える | 第36条の4第2項 |
| 障害者職業生活相談員の選任 | 障害者を5人以上雇用する事業所で選任し、ハローワークへ届け出る | 第79条第2項 施行規則第38条・第40条 |
4つ目は見落とされやすい項目です。障害者を5人以上雇用する事業所では選任が義務で、事由が生じてから3か月以内に選任し、選任後は遅滞なくハローワークへ届け出ます。誰でも選任できるわけではなく、資格認定講習の修了などが要件です。ここで数える5人は、身体・知的・精神が対象です。発達障害の方は、精神障害者保健福祉手帳をお持ちであれば数えます。
義務を負うのは会社です。ただし窓口そのものは、厚生労働省の合理的配慮指針でも外部機関への委託が認められた方法のひとつとされています(第6の1(1)ロ)。ただし委託しても、次は会社の義務として残ります。窓口をあらかじめ定めて社員に周知すること。担当者が相談内容に応じて適切に対応できるようにすること。支障となっている事情の有無を迅速に確認し、配慮の手続を進めること。プライバシーを守る措置を講じ、そのことを社員に周知すること。相談を理由に不利益な扱いをしないと定め、周知すること(指針 第6の1(2)・2〜4)。
公的な相談先は、すでにあります
事業主が相談できる公的な窓口が3つあります。

- ハローワーク 募集・採用の場面では、4つの障害すべてで連携先の1位です
- 障害者就業・生活支援センター 全国340か所(令和8年4月現在)。事業所への助言のほか、職場や家庭への訪問、関係機関との連絡調整、生活面の支援まで行います。雇用の継続や職場定着の場面では、知的・精神・発達で連携先の1位です(身体はハローワーク)
- 地域障害者職業センター 各都道府県に設置。事業主向けの相談窓口があり、利用料は無料です
ただし、こうした関係機関を利用したことがある事業所は、雇用の継続や職場定着の場面で全体の6.4〜9.4%にとどまります。広く使われている制度ではありません。
まずここに相談して構いません。有料のサービスを検討する前に、公的な窓口で足りるかどうかを確かめる順序が現実的です。
それでも埋まりにくいところ
地域障害者職業センターは相談だけの機関ではありません。障害のある方と事業主の双方の同意を得て支援計画を作り、それにもとづいて職場へ支援員を派遣する事業も行っています。利用料は無料です。
ただしこの派遣は、標準で2〜4か月(状況により1〜8か月)の期間を定めて行うものです。原典にも「永続的に実施するものではなく」と書かれています。
そこで残るのが、社員が日常的に立ち寄れる場所です。体調が揺れたとき、業務の進め方に迷ったとき、その日のうちに話せる場所が社外にあるかどうか。
社外に居場所を置くという選択
当社がご提供しているのは、雇用された社員の方が使える社外のオフィスです。作業スペースがあり、相談できる職員がいます。社内では言いにくいことを、社外で話せる場所を持っておく、という考え方です。
ご利用は障害のある方に限りません。休職から戻ってきた社員、体調に不安のある社員。誰でも使える福利厚生として置いておくと、特定の人だけの制度になりません。
当社が求職者をご紹介することはありません。ご紹介するのは事業所です。業務の指示は、貴社から本人へ直接お出しいただきます(職業安定法44条)。
まとめ
- 「続かない」を測る指標は2つあり、身体と発達では順位が入れ替わる
- 平均勤続年数は身体12年2か月・知的9年1か月・精神5年3か月・発達5年1か月(令和5年度)
- 1年定着率(平成27年就職者・A型を除く一般企業)は身体60.8%・知的68.0%・精神49.3%・発達71.5%。勤続年数とは8年ずれた別の調査
- 障害者求人に限ると身体70.4%・知的75.1%・精神64.2%・発達79.5%
- 求人の出し方(障害者求人・A型・一般求人)で、定着率に最大40ポイント近い差がある
- 勤続年数は在職者だけの数字。新規雇用が増えると下がる
- 2つの指標がそろって下位なのは精神障害。障害者求人でも64.2%で最下位
- 合理的配慮と相談体制の整備は事業主の義務。障害者職業生活相談員は、障害者を5人以上雇用する事業所で選任が義務
- 事業主が相談できる公的窓口が3つある。地域障害者職業センターは職場への支援員派遣も無料で行う
- 相談窓口は外部への委託が認められている。ただし委託しても、対応・確認・周知は会社の義務として残る
自社に当てはめると、どこが詰まりそうか
ここまで挙げたのは全国の数字と、法律で決まっている下限です。実際にどこで止まるかは、任せる業務と、受け入れる部署の人数で変わります。
現場に余力がある会社と、そうでない会社では、必要な体制がまったく違います。「うちの場合はどうか」は、この記事では答えが出ません。
障害者雇用の進め方を、貴社の状況に合わせてご説明します

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- 障害者雇用が未達成だとどうなる? 罰則・納付金・企業名公表を整理しています
参考
- 令和5年度障害者雇用実態調査の結果(厚生労働省・PDF) 平均勤続年数・雇用者数と、引用した注記の出典です。従業員5人以上の事業所を対象とした推計値です
- 同 結果報告書(厚生労働省・PDF) 勤続年数の定義と、関係機関の利用状況の出典です
- 障害者の就業状況等に関する調査研究(障害者職業総合センター) 1年定着率の出典です。全国134所のハローワークの専門援助部門(障害者窓口)の紹介で、平成27年7〜8月に就職した5,015人を1年追跡した調査です。障害別の集計は、A型を除く一般企業への就職者3,273人が対象です
- 同 障害者求人による就職者の追加集計(PDF) 障害者求人に限った定着率70.4%・75.1%・64.2%・79.5%の出典です
- 障害者の雇用の促進等に関する法律(e-Gov) 第36条の3・第36条の4・第79条です
- 障害者就業・生活支援センターの概要(厚生労働省・PDF) 340か所の出典です
- 事業主の方へ(高齢・障害・求職者雇用支援機構) 地域障害者職業センターの窓口です
- 地域障害者職業センター(事業主支援)のご案内(PDF) すべての支援が無料であることの出典です
- 合理的配慮指針(厚生労働省・PDF) 相談窓口の外部委託が認められる根拠です
- 障害者雇用義務の対象に精神障害者が加わりました(厚生労働省) 平成30年4月の出典です
- 障害者雇用率制度の概要(厚生労働省・PDF) 実雇用率へのカウントが平成18年からであることの出典です
- 職場への支援(高齢・障害・求職者雇用支援機構) 支援計画の作成と派遣期間の出典です
本記事は2026年9月時点の公表データと法令にもとづいて作成しています。
