障害者雇用を検討している企業向けコラム

障害者雇用が未達成だとどうなる?罰則・納付金・企業名公表を整理

障害者雇用率が未達成のまま年度を越えてしまった。このまま何もしないと、会社はどうなるのか。人事や総務のご担当者から、いちばん多くいただくご質問です。

結論から申し上げると、法定雇用率を達成していないこと自体に「罰金」は科されません。ただし、動くものが2つあります。お金と、会社の名前です。そしてもう1つ、あまり知られていない罰金が別に存在します。

この記事では、未達成の状態で実際に何が起きるのかを、順を追って整理します。

まず結論:罰金はない。動くのは「お金」と「名前」

障害者雇用促進法は、法定雇用率の未達成に対して罰金を定めていません。代わりに、次の2つの仕組みで達成を促しています。

動くもの 内容 対象
お金 障害者雇用納付金の徴収(不足1人につき月5万円) 常用雇用労働者100人超の企業
名前 行政指導を経て、企業名を公表 企業規模を問わない

ここで見落とされやすいのが2行目です。納付金は100人超の企業だけですが、企業名の公表に規模の下限はありません。「うちは100人以下だから関係ない」とは言えない、ということです。

お金の話:不足1人あたり、月5万円

常用雇用労働者が100人を超える企業で法定雇用率が未達成の場合、不足している障害者数に応じて、1人あたり月額5万円の障害者雇用納付金を納めることになります。年間にすると1人あたり60万円です。

計算はとてもシンプルです。

不足人数 × 5万円 × 12か月 = 年間の納付金額

例:従業員200人の企業で、必要な人数5人に対して雇用が3人 → 不足2人 → 年間120万円

従業員数別の早見表

法定雇用率2.7%で計算すると、規模ごとの必要人数と、1人も雇用していない場合の年間納付金は次のようになります。

常用雇用労働者数 必要な人数 0人の場合の年間納付金
100人 2人 —(100人以下は納付金なし)
150人 4人 240万円
200人 5人 300万円
300人 8人 480万円
500人 13人 780万円
1,000人 27人 1,620万円

必要人数は「常用雇用労働者数 × 2.7%」の小数点以下を切り捨てた数です。短時間労働者は0.5人として数えるため、実際の人数は上の表とずれる場合があります。また、一部の業種には除外率が設定されています。

注意していただきたいのは、この納付金は罰金ではないという点です。障害者を雇用するには職場環境の整備などの費用がかかるため、雇用している企業としていない企業の間で経済的な負担を調整する、という趣旨の制度です。納付したからといって雇用義務が免除されるわけではありません。


従業員100人以下の企業に納付金はない

常用雇用労働者が100人以下の企業には、納付金は課されません。ただし雇用義務そのものは残ります。2026年7月から法定雇用率は2.7%となり、対象は常用雇用労働者37.5人以上の企業に広がりました。

達成していれば、逆に支給される

法定雇用率を超えて雇用している場合は、超過人数に応じて支給を受けられます。

  • 障害者雇用調整金:常用雇用労働者100人超の企業に、超過1人あたり月額2万7,000円
  • 報奨金:常用雇用労働者100人以下の企業に、一定数を超えた1人あたり月額2万1,000円

納付金を財源として、達成企業に回る仕組みになっています。

名前の話:企業名公表までは4段階ある

未達成だからといって、いきなり社名が公表されるわけではありません。ハローワークによる行政指導が段階的に行われ、それでも改善が見られない場合の最終手段として公表されます。

企業名公表までの4段階。01 雇入れ計画作成命令、02 適正実施勧告、03 特別指導、04 企業名公表。命令から公表まで、順調に進んでも3年近くかかる。

① 障害者雇入れ計画作成命令

未達成の企業のうち、次のいずれかに当てはまると、ハローワークから2年間の雇入れ計画を作るよう命令が出ます。

  • 実雇用率が全国平均を下回り、かつ不足数が5人以上
  • 実雇用率にかかわらず、不足数が10人以上
  • 雇用義務数が3〜4人の企業で、雇用している障害者が0人

3つ目に注目してください。不足数が少なくても、1人も雇用していなければ対象になります。規模の小さい企業でも、ゼロのままだと指導の対象に入るということです。

② 適正実施勧告

計画1年目の12月時点で実施状況が芳しくない企業には、計画を適正に実施するよう勧告が行われます。

③ 特別指導(9か月)

2年間の計画が満了した時点で改善が特に遅れている企業には、企業名公表を前提とした特別指導が9か月間実施されます。この段階に入ったということは、公表がかなり近いところまで来ている、という意味になります。

④ 企業名公表

特別指導を受けてもなお改善が見られない場合、厚生労働省から企業名が公表されます。報道で取り上げられることもあり、採用活動や取引先との関係に影響が及ぶ可能性があります。

命令から公表までは、順調に進んでも3年近くかかります。逆に言えば、計画作成命令が届いた時点で動き出せば、公表を避ける時間は十分にあります。

唯一の「罰金」は、報告をしないことに科される

ここが、多くの記事で触れられていない部分です。

常用雇用労働者が一定数以上の企業は、毎年6月1日現在の障害者雇用の状況をハローワークへ報告する義務があります(障害者雇用促進法 第43条第7項)。いわゆる「ロクイチ報告」で、提出期限は毎年7月15日です。

この報告をしなかった場合、または虚偽の報告をした場合は、30万円以下の罰金が科されます(同法 第86条第1号)。

未達成であること自体に罰金はない。
しかし、報告しないことには罰金がある。

実務上、悪意のある虚偽報告だけが問題になるわけではありません。短時間労働者のカウント方法を誤ったまま提出し、指摘を受けても修正に応じない、といったケースも起こり得ます。未達成であることを理由に報告を先送りするのが、いちばん避けるべき対応です。報告そのものは、達成・未達成にかかわらず義務です。

未達成の企業は、半数を超えている


厚生労働省が公表した令和7年の集計結果によると、法定雇用率を達成している企業の割合は46.0%でした。裏を返せば、54.0%の企業が未達成ということになります。

同じ集計では、民間企業に雇用されている障害者数は70万4,610.0人で過去最高を更新した一方、実雇用率は2.41%にとどまり、当時の法定雇用率2.5%には届いていませんでした。

未達成は決して珍しい状態ではありません。ただし2026年7月に法定雇用率が2.7%へ引き上げられたため、これまで達成していた企業が未達成に転じるケースも出てきます。自社の必要人数を計算し直しておくことをおすすめします。

いま何から始めればいいか

採用から考え始めると、多くの企業が「任せられる仕事がない」というところで止まります。おすすめしたいのは、順番を変えることです。

  1. 必要人数を計算する 従業員数 × 2.7%(小数点以下切り捨て)。短時間労働者のカウント方法にも注意が必要です
  2. いまある仕事を洗い出す 新しく仕事を作る必要はありません。外注している業務や、社員が本来の仕事の合間に行っている定型作業から探します
  3. まず業務委託で試す いきなり雇用する前に、実際の仕事を任せて成果物と進め方を確認できます
  4. 雇用へ移行する 双方が続けられそうだと判断できた段階で直接雇用へ。雇用開始日から雇用率に算定されます

ジョブリウムでは、この1と2をご一緒するところから始めています。任せる業務が決まっていない段階でもご相談いただけます。

まとめ

  • 法定雇用率の未達成そのものに罰金はない
  • 常用雇用労働者100人超の企業には、不足1人あたり月5万円の納付金が発生する
  • 企業名の公表に規模の下限はない。ただし公表までには4段階、3年近い猶予がある
  • 報告をしない・虚偽の報告をした場合は30万円以下の罰金。これが唯一の罰金
  • 未達成の企業は54.0%(令和7年集計)。ただし2.7%への引き上げで状況は変わる

払い続けるか、その分を雇用に充てるか

最後に、判断のしかたを1つだけ。

従業員300人の企業が1人も雇用していない場合、年間の納付金は480万円です。3年で1,440万円になります。この金額を払い続けても、社内には何も残りません。納付金は罰金ではないので、払ったことで雇用義務が消えるわけでもありません。

一方、同じ金額を直接雇用に振り替えると、状況が変わります。納付金の不足分は解消され、その支出が、実際に業務を担う人材に変わります。データ入力でも、EC運用でも、いま誰かが片手間でやっている作業が社内に返ってきます。

ただし、実際にいくらかかるのか、どの業務から始められるのかは、企業の規模と、いまお持ちの仕事によって変わります。この記事の早見表は、あくまで一律で計算した目安です。

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参考

本記事は2026年8月時点の制度にもとづいて作成しています。金額や要件は改正される場合がありますので、実際のお手続きの際は上記の一次情報をご確認ください。

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