就労支援事業所向けコラム

B型の平均工賃の区分は令和8年6月にどう変わったか|同じ工賃でも基本報酬が下がる事業所の見分け方

前年度の平均工賃は変わっていないのに、6月分から基本報酬が下がった。そういうB型事業所があります。令和8年6月から、基本報酬を決める平均工賃月額の区分の境目が、3千円ずつ上がったためです。

単位が下がったのは、前の境目から3千円以内の上にいた事業所です。たとえばサービス費(Ⅰ)・定員20人以下で、前年度の平均工賃月額が3万1千円なら、1日758単位が738単位になりました。新しい境目で算定するのは、令和6年度に区分が上がった事業所です。それ以外の事業所は、前の境目のままで算定できます。この記事では、自分の事業所が当てはまるかの見分け方と、来年度の区分に向けて今年度にできることを書きます。

利用する人の側から見た工賃の話は、記事「就労継続支援B型の工賃はいくら?」に書きました。この記事では、事業所の報酬の決まりに絞ります。

令和8年6月に変わったのは、区分の境目の金額

平均工賃月額で区分する体系は3つあります。職員の配置が利用者6人に1人以上の「サービス費(Ⅰ)」、7.5人に1人以上の「(Ⅱ)」、10人に1人以上の「(Ⅲ)」です。どれも工賃向上計画を作っていることが条件です。

令和8年6月の見直しでは、もとの区分の単位はそのままです。変わったのは区分の境目の金額で、1万円の境目だけは据え置かれ、ほかは3千円ずつ上がりました。あわせて、単位が下がる事業所のために、A〜Fの中間の区分ができました。多くの表で、8区分が12区分になっています。

B型サービス費(Ⅰ)6:1・定員20人以下の例。平均工賃月額の区分の境目は、令和8年5月までの4万5千円・3万5千円・3万円・2万5千円・2万円・1万5千円が、6月から4万8千円・3万8千円・3万3千円・2万8千円・2万3千円・1万8千円に上がり、1万円は据え置き。前の境目から3千円以内の上は中間の区分に入り、単位が少し低くなる。例は3万6千円で805単位から781単位。新しい境目を使うのは令和6年度に区分が上がった事業所だけ

サービス費(Ⅰ)・定員20人以下の表は次のとおりです(1日あたり)。比べやすいように、金額の範囲を細かく分けて並べています。

平均工賃月額令和8年5月まで令和8年6月から
4万8千円以上837837
4万5千円〜4万8千円837812
3万8千円〜4万5千円805805
3万5千円〜3万8千円805781
3万3千円〜3万5千円758758
3万円〜3万3千円758738
2万8千円〜3万円738738
2万5千円〜2万8千円738726
2万3千円〜2万5千円726726
2万円〜2万3千円726705
1万8千円〜2万円703703
1万5千円〜1万8千円703682
1万円〜1万5千円673673
1万円未満590590

(Ⅱ)(Ⅲ)や、定員21人以上の表も同じ形です。中間の区分の切り方は、定員によって少し違います。自分の事業所の欄は、参考に挙げた令和8年度の改定事項の資料で確かめてください。

新しい境目を使うのは、令和6年度に区分が上がった事業所

見直しのきっかけは、令和6年度の報酬改定で平均工賃月額の計算式が変わったことです。厚生労働省の資料では、新しい式で平均工賃月額が約6千円上がり、高い区分に入る事業所が想定より増えたとされています。そこで、上がった幅の半分の3千円だけ、境目を引き上げることになりました。

このため、令和6年度の区分が令和5年度の区分と同じか、下がっている事業所は、令和8年6月以降も前の境目のままで算定できます。令和8年度は、6月にあらためて区分の届出を出すことになっていました。どちらの境目で届け出たかは、6月の届出の控えで確かめられます。

令和6年度に新しく指定を受けた事業所などは、令和6年度の区分の代わりに令和7年度の区分などを使って、令和5年度と比べます。くわしい条件は、参考に挙げた告示の附則第2条にあります。

単位が下がるのは、前の境目から3千円以内の上にいる事業所

新しい境目を使う事業所でも、全部の区分が下がるわけではありません。単位が下がるのは、前年度の平均工賃月額が、前の境目から3千円以内の上にある場合です。前の境目が3万円なら、3万円から3万3千円未満の事業所です。サービス費(Ⅰ)・定員20人以下で比べると次のようになります。

前年度の平均工賃月額令和8年5月まで令和8年6月から差
4万6千円837812−25
3万6千円805781−24
3万1千円758738−20
2万6千円738726−12
2万4,141円7267260
2万1千円726705−21
1万6千円703682−21
1万2千円6736730

2万4,141円は、令和6年度のB型の全国平均です(18,245か所)。この額の事業所は、(Ⅰ)〜(Ⅲ)の定員40人以下の表では、どれも単位が変わりません。たとえばサービス費(Ⅱ)・定員20人以下なら、見直しの前も後も637単位です。

下がる事業所の差は、1日あたり12〜25単位で、もとの単位の3%までです。1日の利用者が平均17人で、月に22日開いているなら、延べ374人分になります。1日24単位の差なら、月に8,976単位です。1単位をおよそ10円とすると、月に約9万円、1年で約108万円になります。1単位の単価は地域区分で違い、10円より高い地域もあります。

自分の事業所が当てはまるかは、次の3つで確かめられます。

  • 令和6年度の区分が、令和5年度の区分より上がっているか
  • 前年度(令和7年度)の平均工賃月額が、前の境目(4万5千円・3万5千円・3万円・2万5千円・2万円・1万5千円)から3千円以内の上にあるか
  • 6月の届出で、どちらの境目の区分を出したか
就労支援事業所の作業室で、利用者が机に向かって軽作業をしている

平均工賃月額の計算のしかた

令和6年度の報酬改定から、平均工賃月額は次の式で計算します。前の式にあった、一部の利用者を計算から外す決まりはなくなりました。

前年度の工賃支払総額 ÷(前年度の延べ利用者数 ÷ 前年度の開所日数)÷ 12か月

かっこの中は、1日に平均して何人が通ったかです。たとえば、1年間に払った工賃が720万円の事業所を考えます。延べ利用者数が4,800人で、開所日数が240日なら、1日平均20人です。720万円を20人で割り、さらに12か月で割ると、平均工賃月額は3万円になります。

前の式は「各月に工賃を払った人の延べ人数」で割っていました。月に数日しか来ない人も1人と数えていたので、通う日数が少ない人がいる事業所ほど、新しい式で高く出やすくなります。

区分の決め方には、例外もあります。

  • 重度者支援体制加算(Ⅰ)を算定している事業所は、計算した額に2,000円を足した額で区分を決めることができる。障害基礎年金1級を受けている人が、利用者の半数以上いる場合の加算
  • 原材料の値上がりで、同じ都道府県のB型の8割で工賃が下がり、都道府県がやむを得ないと認めた場合などは、前々年度の額で区分を決めることができる
  • 新しく指定を受けた事業所は、初年度の1年間を「1万円未満」とみなす(年度の途中に指定を受けたときは2年度目も)。支援を始めて6か月たった月からは、その6か月の実績で算定することもできる。令和8年6月1日以降に指定を受けた事業所は、令和9年度の報酬改定までの間、基本報酬が約1.6%少なくなる特例がある(離島・中山間地域などは除く)

一律評価の体系(Ⅳ〜Ⅵ)は、平均工賃の区分を使わない

B型には、平均工賃を使わない体系もあります。利用者が生産活動に参加したことをもとに、どの事業所も同じ物差しで評価するサービス費(Ⅳ)〜(Ⅵ)です。単位は利用定員と職員の配置で決まるので、令和8年6月の境目の見直しは関係しません。

その代わり、この体系には短時間利用減算があります。利用時間が4時間未満の利用者が全体の5割以上になると、所定単位数の70%で算定します。どちらの体系にするかは毎年度4月に届け出て、年度の途中では原則として変えられません。来年度の体系を考えるときは、今年度の平均工賃月額と利用時間の両方を見ておく必要があります。

来年度の区分は、今年度の工賃で決まる

区分は、前年度の平均工賃月額で決まります。令和9年度の区分を決めるのは、いま進んでいる令和8年度(2027年3月まで)の工賃です。令和9年度には報酬改定が予定されていて、区分の表がそのまま続くかは、2026年10月時点ではまだ分かりません。それでも、今年度の工賃の額が来年度の区分のもとになることは変わりません。

今年度のうちに確かめておけることを挙げます。

  • 4月から今月までの工賃支払総額、延べ利用者数、開所日数で、今年度の平均工賃月額の見込みを出す
  • 見込みが境目のすぐ下なら、残りの月で売上と工賃をどれだけ増やせば届くかを計算する
  • サービス費(Ⅰ)か(Ⅳ)の事業所は、目標工賃達成加算(1日10単位)の条件を確かめる。工賃向上計画で決めた目標を達成した場合の加算で、目標額には前年度の自分の事業所の額をもとにした下限がある
  • 工賃向上計画は、いまの計画の期間が令和6年度から令和8年度までの3年間。次の計画を作るときの目標の材料に、今年度の実績を残しておく

工賃の平均額は、月3,000円を下回ってはいけないことが指定基準で決まっています。事業所は、年度ごとに工賃の目標を決めて、前年度の平均額とあわせて利用者に知らせ、都道府県に報告することにもなっています。どちらも工賃の支払いの記録から計算するので、月ごとに記録をそろえておくと、区分の見込みも出しやすくなります。

事業所の職員が丸テーブルで資料を見ながら相談している

下がった分は、通う人と仕事を増やして補う

基本報酬は、1日あたりの単位に、その日に通った人数をかけて決まります。区分が1つ下がると1日の単位は減りますが、通う人が増えれば月の合計は増えます。

先ほどの例で考えます。サービス費(Ⅰ)・定員20人で、1日781単位、1日の利用者が平均17人の事業所です。6:1の職員の配置を保てる範囲で、月に22日通う人が1人増えると、月に17,182単位増えます。区分が下がって減った8,976単位より多くなります。

ただし、通う人が増えても工賃支払総額が増えなければ、平均工賃月額は下がり、翌年度の区分に響きます。新しく通う人の作業と工賃も、あわせて考えておく必要があります。

区分そのものを上げるには、工賃のもとになる生産活動の売上を増やすことになります。今の受注先の単価を見直す、受けられる作業の種類を増やす、新しい受注先を探す、のどれかです。

通う人を増やすことにも、仕事を増やすことにも、ジョブリウム キャリアを使えます。キャリアは、事業所を探している人が、地域や駅、サービスの種類から事業所を探して比べるためのサイトです。アカウントを登録して事業所ページを引き継ぐと、利用を考えている人からの問い合わせが管理画面のメッセージに届き、通知メールでも知らせます。

ジョブリウムでは、企業から仕事を受けて、その作業に対応できる掲載事業所へお渡しする取り組み(アウトソース事業)も進めています。受けられる作業を事業所のページに書いておくと、どの事業所に声をかけるかを決めるときの材料になります。

事業所のページは、WAM NET の情報公表で公表されている情報をもとに作られていて、はじめは事業所で撮った写真が入っていません。事業者として無料でアカウントを登録すると、管理画面から次のことができます。すでにページがある事業所は、引き継ぎの手続き(メールで届く確認コードの入力など)をしてから使えます。

  • 作業の写真を載せ、作業の内容、工賃、定員、送迎や昼食などの条件を書き足す
  • ブログで、受けている作業や、新しく始めた作業を伝える
  • 利用を考えている人からの問い合わせを、管理画面のメッセージで受け取り、返信する

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事業所の職員がノートパソコンで事業所のページを確かめている

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参考

本記事は2026年10月時点の制度と公表資料にもとづいています。単位は1日あたりで、円の金額は1単位をおよそ10円とした目安です。

この記事の執筆者

中井裕哉

代表|就労継続支援A型事業所 ネクサスリンク

札幌市東区の就労継続支援A型事業所ネクサスリンク代表。飲食店、不動産、店舗開発など、業種の違う仕事を経験してきました。その中で身につけた「仕事は変わっても、経験は持ち運べる」という考えを大切に、一人ひとりの得意を生かして働ける場をつくっています。 現在は、「好きな仕事を楽しくやる」を、テーマに、AIとITの分野を中心に就労A型事業を展開。

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