障害者向けコラム

就労継続支援B型の工賃はいくら?平均24,141円と、事業所で倍以上ちがう理由

就労継続支援B型で受け取れるお金は「工賃」といいます。全国の平均は月額24,141円(令和6年度)です。

ただ、この数字を見て「思ったより少ない」と感じた方にこそ、続きを読んでいただきたいです。24,141円はあくまで全国を平均した数字で、実際の工賃は事業所によって倍以上ちがいます。

この記事では、平均工賃の実際の数字と、工賃がどうやって決まるのか、そして工賃が高い事業所は何がちがうのかを整理します。「工賃をもらうと障害年金が減るのでは」という心配にもお答えします。

就労継続支援B型の平均工賃は月額24,141円

厚生労働省が毎年公表している数字です。近年の推移を並べます。

年度 B型の平均工賃(月額)
令和元年度 16,371円
令和4年度 17,031円
令和5年度 22,649円
令和6年度 24,141円

数字だけを見ると、年々上がってきています。

ただし、この数字には2つの注意点があります

ひとつは、途中で計算のしかたが変わっていることです。令和6年度の報酬改定で、工賃の総額を割る人数が「工賃を支払った人の数」から「1日あたりの平均利用者数」に見直されました。この新しい方式は令和5年度の数値から反映されています。

表を見ると、令和4年度の17,031円から令和5年度の22,649円へ、1年で5,000円以上跳ね上がっています。これは工賃そのものが急に上がったというより、計算方法が変わったことの影響が大きいと見るべきです。令和5年度と令和6年度は同じ方式なので、こちらは比べて構いません。

もうひとつは、厚生労働省が後から数字を修正していることです。令和5年度の平均工賃は、当初23,053円と公表されたあと、22,649円に修正されました。令和元年度も16,369円から16,371円に直っています。

ネット上には修正前の数字を載せたままの記事も残っています。工賃の数字を調べるときは、厚生労働省のページで年度と最新の値を確かめてください。この記事の末尾にリンクを置いています。

「工賃」と「給料」は何がちがうのか


B型で受け取るお金は、給料ではなく工賃と呼ばれます。呼び方が違うのには理由があります。

B型では、事業所と雇用契約を結びません。「福祉サービスを利用しながら作業をして、その対価を受け取る」という形です。労働者ではないので、最低賃金法が適用されません。

一方、就労継続支援A型は雇用契約を結びます。労働者なので最低賃金以上が保証され、令和6年度の平均賃金は月額91,451円でした。B型の平均のおよそ3.8倍です。

A型の給料の内訳や、都道府県ごとの違いはA型の給料を整理した記事で扱っています。

この違いについては、A型とB型の違いを整理した記事で、働く時間や年齢の条件も含めて詳しくまとめています。

工賃には「月3,000円以上」という下限がある

最低賃金が適用されないなら、いくらでもいいのかというと、そうではありません。

B型事業所には、平均工賃月額を3,000円以上にしなければならないという基準が定められています。障害者総合支援法にもとづく指定基準に書かれているルールで、これを下回る状態が続くと、事業所は指定に関わる指導を受けることになります。

「一人ひとりが3,000円」という意味ではありません

ここは誤解されやすいところです。この3,000円は事業所全体を平均した金額のことで、利用者一人ひとりが必ず3,000円以上もらえる、という決まりではありません。

体調に合わせて短い時間だけ通っている方の工賃が3,000円を下回ることは、実際にあります。

とはいえ、この基準を知っていると、事業所に聞くべきことが見えてきます。見学のときに「この事業所の直近の平均工賃はいくらですか」と聞けば、その事業所がどのあたりにいるのかが分かります。

都道府県でこれだけちがう

全国平均は24,141円ですが、地域によって差があります。令和6年度でいちばん高いのは徳島県の30,231円、いちばん低いのは山形県の19,621円で、1万円以上ひらいています。

お住まいの都道府県の実績は、各都道府県のホームページで公表されています。「(都道府県名) 工賃実績」で検索すると、事業所ごとの工賃が一覧で載っていることも多く、そのまま比較材料になります。

ただし、都道府県の差より、同じ地域の事業所どうしの差のほうがずっと大きいのが実際のところです。次の章がこの記事の本題です。

工賃が高い事業所は、何がちがうのか

工賃が高い事業所の3つの共通点。全国平均は月24,141円(令和6年度)。1 作業の単価が高い(ホームページ制作、動画編集、データ入力などパソコンを使う仕事を扱っている)。2 自分たちで売る先がある(パンの店舗販売、カフェ、ネットショップなど、下請けだけに頼っていない)。3 工賃を上げる努力をしている(事業所が受け取る報酬も、平均工賃が高いほど多くなる仕組み)。

同じB型でも、月2万円の事業所と月5万円を超える事業所があります。この差はどこから生まれるのでしょうか。

1. 扱っている作業の単価が高い

工賃は、事業所が作業で得た売上から支払われます。ですので単価の低い作業ばかりだと、どうやっても工賃は上がりません。

袋詰めやシール貼りといった内職は、1個あたり数円のことも珍しくありません。一方で、次のような仕事は単価がまったく違います。

  • ホームページの制作・更新
  • 動画編集、字幕づけ
  • データ入力、文字起こし
  • SNSの投稿作成・運用
  • 画像加工、バナー制作
  • プログラミング

工賃の高い事業所は、こうしたパソコンを使う仕事を扱っていることが多いです。未経験から教えてくれる事業所もあります。

2. 自分たちで売る先を持っている

下請けの作業だけに頼っていると、単価は発注元の言い値になります。自分たちの商品を作って直接売っている事業所は、そのぶん利益が残ります。

パンや焼き菓子の店舗販売、カフェの運営、ネットショップなどがこれにあたります。

3. 事業所自身にも、工賃を上げる理由がある

意外に知られていませんが、B型事業所が国から受け取る報酬は、その事業所の平均工賃月額によって変わります。工賃が高い事業所ほど、受け取る報酬の単位数も高くなる仕組みです。

つまり、工賃を上げることは事業所にとっても利益になります。「工賃を上げる努力をしているかどうか」は、事業所を選ぶときの見どころだといえます。

工賃はどうやって決まるのか

公表されている「平均工賃月額」は、次のように計算されます。

平均工賃月額 = 1年間に支払った工賃の総額 ÷ 利用者数 ÷ 12か月

先ほど触れたとおり、この「利用者数」の数え方が、令和5年度の数値から1日あたりの平均利用者数に変わっています。

では、一人ひとりの工賃はどう決まるのか。これは事業所ごとに違います。

  • 時間制 作業した時間 × 1時間あたりの単価
  • 出来高制 作った数、こなした件数に応じて支払う
  • 日額制 通った日数 × 1日あたりの金額
  • これらの組み合わせ 基本の日額+出来高、など

どの方式かによって、「たくさん通えば増えるのか」「早く作業できれば増えるのか」が変わります。ここは見学のときに必ず確認しておきたいところです。

工賃と障害年金の話

工賃をもらうと、障害年金は減りますか

よくいただく心配です。結論から言うと、ほとんどの方は減りません。

障害基礎年金には、原則として所得による制限がありません。保険料を納めた実績にもとづいて支給される年金だからです。

所得制限があるのは、20歳前の傷病による障害基礎年金だけです。この場合でも、支給が止まるのはかなり高い所得のときに限られます。

前年の所得(扶養親族なしの場合) 年金
3,761,000円を超える 2分の1が支給停止
4,794,000円を超える 全額が支給停止

令和7年10月からの金額です。B型の工賃が全国平均どおりだとすると年間およそ29万円ですから、この基準にはまったく届きません。「工賃をもらうと年金が止まってしまう」と心配して、通う日数を減らす必要はありません。

ただし、他に収入がある場合や、生活保護を受けている場合は事情が変わります。ご自身の状況にあてはめた正確なところは、年金事務所やお住まいの市区町村の窓口で確認してください。

工賃だけで生活できますか

正直にお答えすると、工賃だけで生活するのは難しいのが実際のところです。全国平均の24,141円では、家賃を払うこともできません。

実際には、障害年金と組み合わせて暮らしている方が多いです。令和8年度の障害基礎年金は次の金額です。

障害基礎年金(月額) 平均工賃を足すと
2級 70,608円 約94,700円
1級 88,260円 約112,400円

ここに、月5万円の工賃を出している事業所に通えたとすると、2級の方でおよそ12万円になります。24,141円の事業所に通う場合との差は、月に2万5千円以上、年間では30万円以上です。

この差は、通う事業所を選ぶだけで生まれます。だからこそ、工賃を確かめてから決める価値があります。

なお、ご家族と同居されている場合、グループホームを利用される場合、生活保護を受けている場合では、必要な金額も考え方も変わります。とくに生活保護は工賃の扱いに細かい決まりがあるため、お住まいの市区町村の窓口でご確認ください。

なお、就労継続支援を利用するには受給者証が必要です。取り方は受給者証の取り方を整理した記事にまとめています。

いまの工賃を上げるためにできること


すでにB型に通っていて、工賃を上げたいと考えている方に向けて、現実的な選択肢を並べます。

  1. 通う日数や時間を増やせないか相談する 時間制・日額制の事業所なら、これが最も直接的です。ただし体調が最優先です
  2. 別の作業を担当させてもらえないか相談する 同じ事業所の中に、単価の高い作業があるかもしれません
  3. 工賃の決め方を聞いてみる 時間制なのか出来高制なのかで、努力の向け先が変わります
  4. パソコン作業を扱う事業所に移る 事業所は変えられます。見学や体験だけしてみることもできます
  5. A型への移行を考える 最低賃金が適用されるため、収入は大きく変わります

4番目に抵抗を感じる方は多いのですが、事業所を移ることは特別なことではありません。いまの事業所に不満を言う必要もありません。まず見学して、比べてみるところからで大丈夫です。

見学で確認すべきことは、事業所の選び方(見学で聞く10の質問)にまとめています。

なお令和7年10月から、B型を新しく利用する場合は原則として「就労選択支援」を先に受けることになりました。詳しくは就労選択支援のデメリットと対処法をご覧ください。

まとめ

  • B型の平均工賃は月額24,141円(令和6年度・全国平均)
  • 令和6年度から計算方法が変わっているため、前年度との単純比較はできない
  • 雇用契約がないため最低賃金は適用されないが、事業所全体の平均で月3,000円以上という下限はある
  • 都道府県差は徳島30,231円〜山形19,621円。ただし同じ地域の事業所どうしの差のほうが大きい
  • 工賃が高い事業所は単価の高い作業を扱い、自分たちの売り先を持っている
  • 工賃で障害年金が減ることは、まずない

平均を調べても、自分の工賃は決まらない

ここまで平均の数字を並べてきましたが、正直に言うと、全国平均を知っても、あなたが実際に受け取る工賃は1円も決まりません。

決めるのは、通う事業所です。同じ市内でも、月2万円の事業所と月5万円の事業所が並んで存在しています。扱っている作業がちがい、売り先がちがい、工賃の決め方がちがうからです。

そして、その情報は事業所ごとに公表されています。調べれば比べられます。

就労継続支援B型の事業所を、工賃で比べてみる


ジョブリウムでは、全国の就労継続支援B型・A型、就労移行支援の事業所を検索できます。お住まいの地域や最寄り駅から、通える範囲にどんな事業所があるかを見られます。

  • 地域・駅・仕事内容から探せます パソコン作業を扱う事業所も絞り込めます
  • 利用している方の口コミが見られます 見学の前に雰囲気を知る材料になります
  • 登録も利用も無料です

気になる事業所が見つかったら、見学のときに次の3つを聞いてみてください。工賃の話は、遠慮せずに聞いて大丈夫です。

  1. 直近の平均工賃はいくらですか
  2. 工賃は、時間制ですか。出来高制ですか
  3. どんな作業があり、自分はどれを担当することになりそうですか

登録も見学の申し込みも無料です。事業所へ連絡するタイミングは、ご自身のペースで決めていただけます。

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参考

本記事は2026年8月時点の制度と公表データにもとづいて作成しています。工賃の実績は毎年更新され、年金の所得基準額も改定されます。実際のご利用の際は、上記の一次情報またはお住まいの市区町村の窓口でご確認ください。

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時給や仕事の内容を見て、気になった事業所に見学を申し込めます。見学に受給者証は要りません。

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