就労移行支援では、雇用契約を結ばないので給料は出ません。工賃が出るかどうかは事業所によって違います。
ここを知らずに通い始めると、生活の見通しが立たなくなります。利用できるのは原則2年。その2年間、どうやって暮らすのかを先に考えておく必要があります。
この記事では、お金が出ない理由と、それでも事業所によって差がつくところ(工賃・交通費・昼食代)、そして生活費の考え方を整理します。
給料は出ません。工賃は事業所によって違います
就労移行支援は「働く場」ではなく「訓練の場」だからです。雇用契約を結ばないので、賃金は発生しません。
一般企業への就職を目指して、必要な知識や体調管理、応募や面接の練習をするための福祉サービスです。生産活動をして売上を作ることが主な目的ではないため、賃金という形のお金は発生しません。
就労系のサービスを並べると、位置づけの違いがはっきりします。
| 受け取るお金 | 月額の全国平均 | 位置づけ | |
|---|---|---|---|
| 就労移行支援 | 給料なし。工賃は事業所による | — | 一般就職に向けた訓練 |
| 就労継続支援A型 | 賃金(雇用契約あり) | 91,451円 | 雇用されて働く |
| 就労継続支援B型 | 工賃(雇用契約なし) | 24,141円 | 作業して対価を受ける |
金額は令和6年度の全国平均です(厚生労働省)。A型とB型の違いについては、A型とB型の違いを整理した記事で詳しく扱っています。
工賃を出している事業所もあります
指定基準は、生産活動に従事している利用者への工賃の支払いを就労移行支援にも義務づけています。支払う額は生産活動の収入から経費を引いた額なので、生産活動があっても0円になることがあります。B型にある「事業所全体の平均を月3,000円以上にする」という下限もありません。そもそも生産活動を行わず訓練だけの事業所もあります。
実際に工賃が出るかどうかは、生産活動をしている事業所かどうかで変わります。収入を得ることを主な目的としたものではありません。
ですので金額は事業所によって大きく違います。厚生労働省が毎年公表している工賃実績の対象はA型とB型だけで、就労移行支援は含まれていません。生活費をまかなえる水準は期待しないでください。それでも「働いてお金を受け取る」という感覚を取り戻す意味はあります。
工賃を出しているかどうかは事業所ごとに違います。気になる場合は、見学のときに「作業に対して工賃は出ますか」と聞いてみてください。
交通費と昼食代は、毎日のことなので積み上がる

お金が出ないだけでなく、出ていくお金があります。ここを見落とすと後で苦しくなります。
交通費は原則自己負担です
通所にかかる交通費は、原則としてご自身の負担になります。
仮に往復500円の場所へ週5日、月20日通うとすると、月に1万円です。年間で12万円になります。決して小さい額ではありません。
ただし、これも事業所と自治体によって差があります。
- 事業所が交通費を支給しているところがあります 全額のところ、上限つきのところがあります
- 自治体が助成しているところがあります お住まいの市区町村に制度があるか確認する価値があります
- 送迎をしている事業所もあります(費用の有無は事業所によります) これなら交通費そのものがかかりません
昼食代も事業所によって違います
昼食を出している事業所では食材費などの実費がかかりますが、補助を出しているところもあります。低所得・一般1の世帯は食材料費だけの負担になる仕組みがあり、厚生労働省は月22日利用で約5,100円程度という目安を示しています(令和9年3月末までの経過措置です)。持参できるかどうかもあわせて確認しておくと安心です。
交通費と昼食代は、毎日のことなので積み上がります。「工賃が出るか」よりも、こちらのほうが家計に効くことも珍しくありません。見学のときに必ず聞いてください。
利用料はいくらかかりますか
就労移行支援も障害福祉サービスなので、世帯の収入に応じた負担上限額が決まっています。
| 区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 |
|---|---|---|
| 生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
| 低所得 | 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
| 一般1 | 市町村民税課税世帯(所得割16万円未満)※入所施設利用者(20歳以上)・グループホーム利用者を除く | 9,300円 |
| 一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
そして大事な点です。18歳以上の方の場合、収入を判断する「世帯」はご本人と配偶者だけで、親の収入は含まれません(施設に入所する18歳・19歳を除く)。
親と同居していても、ご本人に配偶者がなく、市町村民税が非課税であれば上限額は0円です。ご自身がどの区分になるかは市区町村の窓口で確認できます。詳しくは受給者証の取り方を整理した記事にまとめています。
なお、この上限はサービス費の自己負担についてのものです。先ほどの交通費や昼食代は、これとは別にかかります。
では、2年間どうやって暮らすのですか

ここがこの記事のいちばん大事なところです。収入が入らない期間をどう乗り切るかを、通い始める前に考えておいてください。
代表的なのは障害年金です
令和8年度の障害基礎年金は次の金額です。初診日に厚生年金へ加入していた場合は障害厚生年金の対象になり、こちらには3級と障害手当金があります。
| 障害基礎年金(月額) | |
|---|---|
| 1級 | 88,260円 |
| 2級 | 70,608円 |
要件を満たして請求すると、これに障害年金生活者支援給付金が上乗せされます。令和8年度で1級が月7,025円、2級が月5,620円です。18歳到達年度末までの子(一定の障害がある場合は20歳未満)がいる場合は子の加算もあり、1人目・2人目は年額243,800円、3人目以降は年額81,300円です。
まだ受給していない方は、就労移行支援に通い始める前に、年金事務所で相談してください。国民年金だけの方は市区町村の国民年金窓口でも請求できます。申請から決定までには時間がかかります。
ほかにも制度はありますが、判断する窓口が違います
状況によっては、次のような制度が関わってきます。
- 傷病手当金 健康保険から支給されるもの。相談先は加入している健康保険です
- 失業給付(基本手当) 相談先はハローワークです
- 生活保護 相談先はお住まいの市区町村です
これらを就労移行支援の利用と組み合わせられるかどうかは、ここでは断言できません。それぞれの制度に受給の要件があり、判断するのは上に書いた窓口です。「通いながら受け取れますか」と、必ずその窓口で確認してください。
ネットの情報や事業所の説明だけで判断せず、お金の話は決定権のあるところに直接聞くのが確実です。
ご家族と相談しておくこと
2年という期間は短くありません。お金の見通しをご家族と共有しておくと、途中で焦らずに済みます。見学にご家族と一緒に行くのも良い方法です。
通いながらアルバイトはできますか
とてもよく聞かれる質問です。アルバイトそのものを禁じる規定は見当たりませんでした。ただし国の定めでは、すでに雇用されている方が就労移行支援を使えるのは限られた場合とされています。就労移行支援の対象は「通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる」方だからです。
自治体のなかには、札幌市の手引きのように、利用者がアルバイトを行うことを認めていないと明示しているところがあります。アルバイトが「一般就労」にあたるかどうかも自治体の判断です。
判断するのは市区町村です。「知り合いが大丈夫だったから」で始めると、支給決定に影響することがあります。始める前に、通っている(通う予定の)事業所と市区町村の両方に相談してください。
もうひとつ、アルバイト収入は利用料の区分にも関わります。18歳以上の方は本人と配偶者の市町村民税で判定されるので、非課税から課税に変わると上限額が動きます。
働きながら使える型もあります
施行規則が原則の対象としているのは就労を希望する65歳未満の障害者で、すでに雇用されている方は限られた事由のときだけ対象になります。この考え方は変わっていません。例外として使える型が整理された、という位置づけです。令和6年4月に法令へ位置づけられたのは次の2つです。
- 働き始めたあとに労働時間を延ばそうとするとき(概ね週10時間以上20時間未満から段階的に増やす場合)
- 休職から復職しようとするとき
このほか厚生労働省の通知では、概ね週10時間未満を目安に就職した方が引き続き就労移行支援を使う取扱い(就労移行支援短時間型)も整理されています。いずれの型も、市区町村が個別に判断します。
期間の扱いも型で違います。労働時間を延ばす型は下に書く2年の枠に通算されません(原則3〜6か月、延長して合計1年まで)。復職の型は休職期間の終了までで、上限2年です。短時間型は2年の枠のなかで、最大3年まで支給決定できます。
前提が型によって違います。労働時間を延ばす型と短時間型は、もともと就労移行支援などを利用していた方が対象です。労働時間を延ばす型は、就職前と同じ事業所を続けて使うことが原則になっています。
いっぽう復職の型は、前に利用していなくても使えます。休職中で就労移行支援を使ったことがない方も対象です。ただし、まずは障害者職業センターや医療機関のリワーク支援が原則で、それが使えない場合に限って認められます。企業・主治医・相談支援事業所の3つの書類も要ります(セルフプランの場合、3つ目はご本人が作成します)。
いずれにしても、アルバイトのために新しく使いたい、という場合には当てはまりません。
収入そのものが必要でアルバイトを考えているなら、就労継続支援A型・B型のほうが筋が通っています。次の章で説明します。
お金が必要なら、A型・B型という選択肢もあります
いま収入が必要なら、就労移行支援は向いていないかもしれません。
就労継続支援なら、通いながらお金を受け取れます。
- A型 雇用契約を結び、原則として最低賃金以上が支払われます。全国平均は月額91,451円(A型の給料を詳しく)
- B型 雇用契約はありませんが工賃が出ます。全国平均は月額24,141円(B型の工賃を詳しく)
もちろん、目的が違います。就労移行支援は一般企業への就職を目指す訓練で、A型・B型は働く場そのものです。就労移行支援は、一般就職に向けた訓練に特化しています。
ですので「どちらが良い」ではなく、いまの自分に収入がどれだけ必要かで決めるのが現実的です。B型で生活を整えてから就労移行支援に移る、という順番もあります(就労移行支援は原則65歳未満です。B型に年齢の上限はありません)。
ひとつ手順の注意があります。令和7年10月から、B型を新しく利用するときは原則として就労選択支援を先に受けることになりました。50歳以上の方、障害基礎年金1級の方、就労経験があり年齢や体力の面で一般就労が困難になった方は、就労選択支援を受けなくてもB型を利用できます(希望すれば受けることもできます)。また近くに就労選択支援の事業所がない場合や待機が生じる場合は、従来のアセスメントでB型を利用できます。A型は令和9年4月から対象とする予定とされていますが、取扱いは改めて示されます。詳しくは就労選択支援のデメリットと対処法にまとめています。
利用できるのは原則2年です
就労移行支援の標準利用期間は2年(24か月)と定められています。ただし最初の支給決定は1年までが原則で、1年ごとに更新しながらこの枠のなかに収めます。最初から2年分の受給者証が出るわけではありません。
始めるときには暫定支給決定もあります。まず2か月以内で試してみて、続けられそうかを確認してから本決定に進む仕組みです。この2か月は2年に含まれます。上乗せではありません。
あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師の養成施設に通う場合は例外で、標準利用期間が3年または5年になります。この場合は暫定支給決定を行いません。
もうひとつ先の話として、令和9年4月からは、標準利用期間を超えて就労移行支援を使う場合にも就労選択支援のアセスメントが必要になる予定です。延長を考えるときは、その時点の取扱いを窓口で確認してください。
ただし、延長できる場合があります。サービスを続けることによる改善効果が見込まれ、必要性が認められれば、原則1回・最大1年の更新が認められます。判断するのは市区町村で、市町村審査会の個別審査を経て決まります。自動的に延びるものではありません。
2年で就職できなかったらどうなりますか
期間が終わっても、次の選択肢があります。
- A型・B型に移る 働きながら経験を積む形に切り替えます
- 延長を申請する 就職の見込みがある場合です
- いったん離れて、あとで再利用する 厚労省の通知でも複数回の利用が可能とされています。市町村が個々の状況をみて判断します
2年で終わりではありません。ただ、期間があること自体は最初から頭に入れておいたほうが、計画が立てやすくなります。
まとめ
- 就労移行支援は訓練の場。雇用契約がないので給料は出ない。工賃は事業所によって違う
- 工賃を出している事業所もある。生活費をまかなえる額ではない
- 交通費は原則自己負担。ただし事業所の支給や自治体の助成、送迎がある場合も
- 利用料は18歳以上なら本人と配偶者の収入だけで判断。非課税世帯・生活保護世帯は0円
- 生活費の柱になりやすいのは障害年金。他の制度は健康保険・ハローワーク・市区町村で確認する
- 収入が必要ならA型(91,451円)・B型(24,141円)という選択肢もある
- 利用は原則2年、最大1年の延長。終わってからの選択肢もある
お金が出るかどうかは、事業所によって違います
ここまで制度の話を書きましたが、実際にいくら出ていくかは、通う事業所で決まります。
工賃を出しているか、交通費を支給しているか、送迎があるか、昼食に補助があるか。これは全部、事業所ごとに違います。月に1万円の差がつくこともあります。
そして、これらは見学のときに聞けば分かることです。制度の記事を読み込むより、通える範囲の事業所に2〜3か所聞いてみるほうが、はるかに早く答えが出ます。
就労移行支援・A型・B型の事業所を探して、お金のことを聞いてみる

ジョブリウムでは、全国の就労移行支援、就労継続支援A型・B型の事業所を検索できます。お住まいの地域や最寄り駅から、通える範囲にどんな事業所があるかを見られます。
- 地域・駅・仕事内容から探せます 通える範囲の事業所が一覧で分かります
- 利用している方の口コミが見られます 見学の前に雰囲気を知る材料になります
- 登録も利用も無料です
見学のときは、次の4つを聞いてみてください。お金の話は遠慮せずに聞いて大丈夫です。
- 作業に対して工賃は出ますか
- 交通費の支給や送迎はありますか
- 昼食はどうなりますか。実費はいくらですか
- 通っている方は、生活費をどうされていますか
4つ目は聞きにくいかもしれませんが、よくある相談です。使える制度を教えてもらえることもあります。
登録も見学の申し込みも無料です。事業所へ連絡するタイミングは、ご自身のペースで決めていただけます。

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参考
- 障害福祉サービスの内容(厚生労働省)
- 障害者の利用者負担(厚生労働省)
- 令和6年度工賃(賃金)の実績について(厚生労働省・PDF) A型91,451円・B型24,141円の出典です
- 指定障害福祉サービス基準 第85条・第184条・第201条(e-Gov) 工賃の支払いとB型の下限の条文です
- 障害者総合支援法施行規則(e-Gov) 在職者の2つの事由は第6条の7の5、対象者は第6条の9です
- 就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)における留意事項について(厚生労働省・PDF) 在職者の3類型と複数回利用の出典です
- 障害年金生活者支援給付金(日本年金機構) 7,025円・5,620円の出典です
- 介護給付費等に係る支給決定事務等について(厚生労働省・PDF) 支給決定期間・暫定支給決定・養成施設の3年/5年の出典です
- 障害基礎年金の受給要件・年金額(日本年金機構) 令和8年度の金額の出典です
本記事は2026年9月時点の制度にもとづいて作成しています。工賃や交通費の取り扱いは事業所によって、助成制度は自治体によって異なります。傷病手当金・失業給付・生活保護の受給可否は、それぞれの窓口の判断となります。実際のご利用の際は、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口または各制度の窓口にご確認ください。
