障害者向けコラム

障害年金をもらいながらA型で働ける?精神障害2級の36%は働いている|10月から支給停止・減額も複数の認定医で審査

「A型で働いたら、年金が止まるのでは」「働けているなら、申請しても通らないのでは」。障害年金は、働いているかどうかではなく障害の状態で決まります。A型の給料が増えても減りません。障害基礎年金2級(給付金を含む)とA型の平均給料を合わせると月167,679円、A型だけなら91,451円です。これから申請する人も、すでに受けている人も、働いていることは同じ基準で見られます。所得で年金が止まる仕組みは1つだけあり、それもA型の給料では届きません(本文で計算します)。

実際に、障害年金を受けている精神障害の人(20〜59歳)のうち、働いている人は34.8%。国民年金の2級に限ると36.4%が働いています(厚生労働省の令和元年調査をもとにした集計。これまで5年おきに行われ、公表されている最新です)。

不安の元は、申請や更新の審査で「働けているなら軽くなった」と見られることでしょう。国の判定ガイドラインには、A型・B型・障害者雇用での就労は「1級または2級の可能性を検討する」と書かれています。令和6年度の更新1万件の抽出調査では、96.8%がそのまま継続で、支給停止は1.0%でした。

これから申請する人には、知っておいてほしいことが1つあります。令和6年度は、精神障害で新しく申請した人の不支給が前の年のほぼ2倍に増えた年でした。これを受けて、不支給の判断は令和7年8月から必ず複数の認定医が行うようになり、令和8年10月から順に、支給停止や減額の判断にも広がります。「1人の認定医の判断だけで落とされる」ことは、なくなっていきます。この記事では、年金とA型の給料を合わせた月の収入、診断書で医師に伝えること、審査がどう変わったかを書きます。

働くと年金は止まる? 決まりは「障害の状態」

障害基礎年金・障害厚生年金は、障害の状態が法令の等級に当てはまる間、受け取れます。給料が増えたから減る、働き始めたから止まる、という仕組みは、20歳前傷病の障害基礎年金を除いてありません。

所得による制限があるのは、20歳になる前に初診日があって、そのとき厚生年金に入っていなかった人の障害基礎年金だけです。20歳を過ぎてから初めて病院にかかった人には、この制限はありません。当てはまる人でも、止まり始めるのは前年の所得が376万1千円を超えてから(扶養親族がいない場合。479万4千円超で全額停止、10月分から翌年9月分まで)。A型の平均月給91,451円を1年続けても年収は約110万円、給与所得控除(令和7年分は65万円)を引いた所得は約45万円で、制限まで330万円の余裕があります。

年金を受けている側の税金も変わりません。障害年金は非課税なので、A型の給料と合わせても、所得税や住民税の計算に入るのは給料の分だけです。

年金とA型の給料で、月にいくらになるか

令和8年度の障害基礎年金は、2級が年847,300円(月70,608円)、1級が年1,059,125円(月88,260円)です(昭和31年4月1日以前生まれの人は少し低い額です)。精神障害者保健福祉手帳の等級と年金の等級は別々に審査されるので、手帳が2級でも年金が2級になるとは限りません(年金を受けている人が年金証書で手帳を申請すると、手帳は年金と同じ等級になります)。年金の等級は、診断書に書かれた日常生活の状態と就労の状況で判断されます。何を伝えれば実態どおりに書いてもらえるかは、後半の「医師に伝えておくこと」にまとめました。障害基礎年金の1級・2級を受けていて前年所得が479万4千円以下(扶養親族がいない場合。1人につき38万円加算)なら、障害年金生活者支援給付金が2級で月5,620円、1級で月7,025円つきます(自動ではなく、請求書の提出が要ります)。A型の給料は原則として最低賃金が下限で、令和6年度の全国平均は月91,451円でした。

組み合わせ年金給付金給料・工賃月の合計
障害基礎年金2級 + A型70,608円5,620円91,451円167,679円
障害基礎年金1級 + A型88,260円7,025円91,451円186,736円
障害基礎年金2級 + B型70,608円5,620円24,141円100,369円
A型だけ(年金なし)91,451円91,451円

年金は偶数月に2か月分がまとめて振り込まれ、A型の給料は毎月です。表の「月の合計」は、その2つを月あたりにならした額です。会社員のときに初診日がある人は障害厚生年金の対象で、1級・2級なら表の障害基礎年金の額に、加入していた期間と給与で決まる額(1級はその1.25倍)が上乗せされます。その人にとって表は下限です。見込みは年金事務所で聞けます。

障害年金とA型の給料を合わせた月の収入。2級+給付金+A型で167,679円、1級なら186,736円、2級+B型は100,369円

2級とA型の組み合わせで月16万7千円。B型との差は、給料の差がそのまま出て月6万7千円です。時給の下限が10月以降、順に上がる話は、47都道府県の新しい最低賃金の記事に一覧があります。

更新のとき、働いていることはどう見られるか

障害年金には、障害の状態に応じて提出が必要となる年に、状態を確かめる更新があります。誕生月の3か月前の月末に「障害状態確認届(診断書)」が届き、医師に書いてもらって誕生月の末日までに提出します。次にいつ提出するかは、初回は年金証書に、2回目以降は日本年金機構から届く「次回の診断書の提出について(お知らせ)」に書いてあります。

精神の障害用の診断書には「現症時の就労状況」という欄があり、勤務先(一般企業・就労支援施設・その他)、雇用の形(障害者雇用・一般雇用など)、勤続年数、仕事の頻度、ひと月の給与、仕事の内容、そして仕事場での援助の状況や意思疎通の状況を書きます。A型で働いていることは、この欄でそのまま伝わります。この欄は、申請用の診断書にも、更新用の障害状態確認届(診断書)にも同じ内容で入っています。

「2級は働けない人」ではない

日本年金機構の案内では、2級は「日常生活は極めて困難で、労働によって収入を得ることができないほどの障害」と説明されています。この一文だけを読むと、A型で働いた時点で2級から外れるように見えます。

審査は障害認定基準にもとづいて行われ、精神の障害については「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」(平成28年9月から運用)が使われます。ガイドラインにはこう書かれています。

労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況などを十分確認したうえで日常生活能力を判断する。

(中略)

就労系障害福祉サービス(就労継続支援A型、就労継続支援B型)及び障害者雇用制度による就労については、1級または2級の可能性を検討する。就労移行支援についても同様とする。

A型は、この「就労系障害福祉サービス」そのものです。働いていること自体ではなく、どんな援助を受けて働いているかが判断の材料になります。日本年金機構が医師向けに出している診断書の記載要領にも、就労状況の欄について「就労している事実だけで、障害年金の支給決定が判断されることはありません」と書かれています。

数字でも見ておきます。厚生労働省が令和6年度の更新(再認定)を1万件抽出して調べたところ、96.8%が継続支給、増額改定1.4%、減額改定0.8%、支給停止1.0%でした。

医師に伝えておくこと

診断書の就労状況の欄を書くのは医師ですが、事業所での様子を医師は見ていません。申請や更新の前に、次のことを伝えておくと、欄が実態どおりになります。

  • 勤務先がA型事業所であること(診断書の勤務先欄では「就労支援施設」に丸が付くのが通例です)
  • 1日の時間と週の日数。休んだ日や早退した日の頻度
  • 事業所で受けている援助。声かけ、作業の細分化、体調による作業の変更、面談など
  • 働いた日の帰宅後や休日の状態。就労以外の場面での生活の様子もガイドラインの考慮要素です

事業所の支援員に、援助の内容を紙に書いてもらって医師に渡す方法もあります。A型事業所には個別支援計画があるので、そこに書かれた支援内容がそのまま材料になります。

令和6年度に起きたことと、10月からの変更

令和6年度は、新しく申請した人の不支給が増えた年でした。厚生労働省の抽出調査(令和7年6月11日の報告書)では、令和6年度に決定された新規請求のうち精神障害の診断書703件の12.1%が不支給でした。前の年の統計では6.4%だったので、ほぼ2倍です(障害全体では8.4%から13.0%)。

これを受けて日本年金機構は、令和6年度以降の精神障害などの不支給事案を点検しました。令和8年3月31日時点で14,841件を点検し、444件(約3.0%)が支給に変わりました

令和7年12月には、審査の書類(認定調書)を職員が廃棄して別の認定医に頼み直していた、という報道も出ました。厚生労働省の調査(令和8年4月30日公表)では、別の認定医に頼んだ主な理由は「3か月」という審査期間の目標に間に合わせるためでした。詳しい経緯は参考の調査結果にあります。

不支給はすでに複数の認定医で審査。10月からは支給停止・減額にも広げる

これを受けて決まったことのうち、申請する人・更新する人に関わるのは2つです。

  • 不支給の判断は、令和7年8月からすべて複数の認定医が行っている(日本年金機構の対応状況・令和7年9月)
  • 令和8年10月から順に、支給停止・減額改定の判断も複数の認定医で行い、判断が分かれたものは認定審査委員会で決める(令和8年4月30日の調査結果)

書類の扱いの見直しも決まっています(別の認定医に頼む場合も当初の認定調書を保存する。令和8年1月19日から実施)。審査を複数回行う場合の期間の目標は、3か月から4か月になります。

これから申請する人にも、更新を控えている人にも、「1人の認定医の判断だけで不支給や停止になる」ことがなくなる変更です。

不支給や級落ちになったら

決定に納得できないときは、審査請求ができます。期限は、決定を知った日の翌日から3か月以内です。審査請求の結果にも納得できなければ、決定書の謄本が送付された日の翌日から2か月以内に再審査請求ができます。不支給決定通知書には理由が付いているので、診断書のどこが弱かったかを見てから、審査請求か、状態が変わってからの再請求かを決めます。

年金が止まっても、A型の雇用契約と給料は別に続きます。逆に、A型を辞めても年金は止まりません。2つは別の制度です。

まだ申請していない人は、年金請求書と診断書を年金事務所または市区町村の窓口に出すところから始まります。就労状況の欄は申請用の診断書にも同じ内容で入っているので、上の「医師に伝えておくこと」は申請のときにもそのまま使えます。申請では、本人が自分の就労状況を書く「病歴・就労状況等申立書」も出すので、そこにも同じ内容を書けます。

A型を選ぶとき、年金の面で見ておくこと

診断書の「仕事場での援助の状況」を書けるだけの援助がある事業所かどうかです。見学のときに、週何日から始められるか、体調が悪い日の扱い、作業の変更、面談の頻度を聞いておくと、入ってから更新のたびに説明しやすくなります。個別支援計画に支援内容がどう書かれるかも、聞いていい質問です。

もう1つは、事業所が続くかどうかです。令和6年度は国の給付のルールが変わり、A型で7,292人が解雇されました(1か月に10人以上をまとめて解雇した事業所の分だけの数字です)。続く事業所の見分け方はA型閉鎖の記事にまとめてあるので、見学の前に読んでおくと、聞くことが1つ増えます。

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まとめ

  • 障害年金は障害の状態で決まる。働いても、20歳前傷病の障害基礎年金以外に所得制限はない
  • 20歳前の制限も所得376万1千円超から。A型の平均年収約110万円(所得約45万円)では届かない
  • 2級+給付金+A型の平均給料で月167,679円。B型との差は月6万7千円
  • ガイドラインはA型・B型・障害者雇用の就労を「1級または2級の可能性を検討」。令和6年度の更新は96.8%が継続、停止は1.0%
  • 令和6年度に精神の不支給が6.4%→12.1%(抽出調査)に増え、点検で444件が支給に。不支給は令和7年8月から複数の認定医が審査し、10月からは支給停止・減額にも広げる

ここまでは、制度と全国の数字です

更新で見られるのは「働いているか」ではなく「どんな援助を受けて働いているか」です。同じA型でも、体調の波に合わせて作業を変える事業所と、決まった作業を決まった時間こなす事業所では、診断書に書ける中身が違います。

年金と両立しやすいのは、援助の中身を言葉にできる事業所です。賃金を報告している事業所では、事業所ページで時給と月額賃金が分かります。援助の中身は、見学で聞いて初めて分かります。

障害年金と両立できるA型事業所を探す

見学に受給者証は要りません。事業所ページで時給と月額賃金を見て、気になった事業所に「体調が悪い日はどうしていますか」「面談はどのくらいの頻度ですか」の2つを聞いてください。答えがそのまま、申請や更新の診断書で医師に伝える材料になります。まだ年金を申請していない人も、見学は今日からできます。

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参考

本記事は2026年9月時点の制度と公表資料にもとづいています。年金額は令和8年度、就労率は令和元年調査、認定状況は令和6年度分の数字です。

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