障害者向けコラム

A型事業所はおかしい?助成金目当ての所とそうでない所は、給料の出どころで分かれています

A型事業所には、仕事の売上のほかに、利用者が通うことで自治体から入るお金(給付費)と、人を雇うときに国から出る助成金があります。

かつては、仕事がほとんど無くても、この2つで給料を払っている事業所があり、それが「助成金目当て」と呼ばれました。

給付費で給料を払うやり方は、平成29年(2017年)に原則できなくなりました。売上で給料をまかなえていない事業所は、国が調べた事業所の2割です。ほとんどが立て直しの計画を出しています。

それでも今の事業所に違和感があるなら、給料の出どころと決まりに照らして、自分で確かめることができます。

「助成金目当て」と呼ばれた仕組み|A型事業所に入る3つのお金

A型事業所に入るお金は、大きく分けると3つあります。

1つ目は、利用者が通うことで市区町村から入るお金です。法律の正式な名前は訓練等給付費といい、自立支援給付(法律が本人に支給すると定めたお金)の一つです。本来は通っている本人のためのお金ですが、事業所が代わりに受け取ります。

2つ目は、仕事で稼ぐお金です。法律では生産活動(事業所でする仕事のこと)の収入と呼ばれ、商品の販売や作業の売上がこれに当たります。

3つ目は、障害のある人を雇ったときに国から出るお金です。ハローワークを通して事業主に支払われる、雇うときの助成金(特定求職者雇用開発助成金・特開金)です。

1つ目の給付費と、3つ目の助成金は、どちらも「助成金」とひとまとめに呼ばれがちです。しかし、お金の出どころも法律もまったく違います。

ここまでに出てきた言葉を整理しておきます。

  • 給付費:あなたが通うと、市や区から事業所に入るお金
  • 生産活動:事業所でする仕事のこと
  • 雇うときの助成金(特開金):事業所があなたを雇うと、国から事業所に入るお金
お金 どこから来るか だれのためのお金か 給料に使ってよいか
給付費(訓練等給付費) 市区町村 通っている本人のための福祉のお金。事業所が本人の代わりに受け取る 原則だめ(災害などは例外)
仕事の売上(生産活動の収入) 取引先・お客さん 事業所が仕事で稼いだお金 ここから払う決まり
雇うときの助成金(特定求職者雇用開発助成金) 国(都道府県労働局・ハローワーク) 就職が難しい人を雇った事業主のためのお金 給料の一部にあたる額。給料より多くは入らない
A型事業所に入る3つのお金と給料の出どころの図解。市や区から給付費、取引先から仕事の売上、国(労働局・ハローワーク)から雇うときの助成金が事業所に入り、あなたの給料は仕事の売上から払う決まり。給付費で給料を払うのは原則だめ、助成金は給料より多く入らない。昔(平成29年3月まで)は給付費と助成金で給料を払う事業所があり、今(平成29年4月〜)は売上で届かない事業所は約2割(令和7年3月末・4,006事業所中774)

なぜ仕事がなくても給料を払えたのか|昔、問題になったやり方

かつて問題になったのは、仕事がほとんど無い事業所のやり方です。仕事で稼いだお金では給料が足りないのに、利用者が通うことで入る給付費と、人を雇ったときの助成金(特開金)を給料に回していました。

厚生労働省は、平成29年(2017年)3月の会議資料で、不適切な例を挙げています。資料には「浮いた自立支援給付費を実質的に利用者である障害者の賃金に充当している事例」とあります。

さらに同じ資料では、「収益の上がらない仕事しか提供しない事例」も指摘されていました。

本来、福祉のお金である給付費を給料に回したり、働く人のためにならない仕事しか用意しなかったりする運営が、大きな問題とされたのです。

平成29年に変わった決まり|給付費で給料を払うのは原則禁止になった

こうした問題を受けて、国の基準が改められました。平成29年(2017年)4月1日から、新しい決まりが動き出しています。

国の基準では、仕事の売上から経費を引いた金額が、利用者に払う給料の合計以上でなければならないと定められました。仕事の稼ぎの中から給料を払う原則が、はっきりと決められた形です。

あわせて、給料を給付費から払うことも原則禁止とされました。ただし、災害などやむを得ない理由があるときは例外です。たとえば新型コロナウイルスの拡大時、国はやむを得ない理由として給付費を給料に回すことを認めました。

売上で給料を払えない事業所は、経営改善計画(立て直しの計画)を出します。まず1年待ってもらえ、見込みがあればもう1年延びます。行く前に見分ける方法は、「やめとけ」が当てはまる所と当てはまらない所にまとめています。

雇うときの助成金(特開金)は今どうなっているのか

人を雇った事業主に出る助成金(特開金)は、現在もA型事業所が利用者として人を雇うときに対象となります。国の通知で、今も出してよいことになっています。

しかし、お金目当てで利用者を次々に入れ替えるようなやり方には、いくつかの要件で歯止めがかけられています。

まず、一般の会社で働きながら一時的に利用している人は対象になりません。また、同じ法人の就労移行支援(一般就労を目指す訓練の事業)やB型から移ってきた人を雇う場合も、原則として対象外です。

さらに、A型事業所だけの特別な決まりがあります。助成金の対象として雇った人が5人以上いて、雇って1年の時点で25%を超えて辞めていると、助成金は出ません。都道府県などから勧告や指定の取り消し・停止を受けた事業所は、改善するまでの間、対象外です。

助成金の額は、働く時間などによって分かれます。重度障害者(障害の程度が重い人)や精神障害者などを雇った中小企業の場合、最大で240万円(3年間)です。支給額は給料の総額が上限で、受け取るのは事業所のため、利用者の手元には入らず、雇うだけで儲かるお金でもありません。

令和の改定で何が起きたのか|点数で見える化され、届かない事業所は2割まで減った

令和3年(2021年)4月から、事業所を点数で評価するスコア方式が始まりました。令和6年の改定では、仕事の稼ぎに応じた点数の配分が大きくなりました。

仕事の売上で給料を払えている事業所には、高い点数がつきます。一方で、前年度に届かない事業所は点数が下がり、何年も続けて届かないとマイナスになります。求められた期日までに改善の計画を出さない事業所は、マイナス50点の重い減点です。

この間に、事業所の数字はどう動いたのでしょうか。前の年は、調べた事業所の37.4%が売上で給料を払えていませんでした。令和7年3月末は、調べた4,006事業所のうち774か所(19.3%)です。

つまり、調べた事業所の約8割は、仕事の売上で給料を払う基準を満たしています。

令和6年度は、解雇が多かった年でもあります。各月内に10人以上の解雇が発生した事業所で、7,292人の利用者が解雇されました。背景は、解雇7,292人の年に閉鎖した事業所に共通していたことにまとめています。

今の事業所が「おかしい」と感じたときに、自分で確かめる4つ

いま通っている事業所に疑問を感じたら、雰囲気だけで判断せず、公表されている書類や決まりをもとに確かめることができます。

1つ目は、仕事が実際にあって、その売上で給料を払えているかです。これはスコア表2枚目(実績が載った様式)で確認できます。福祉のポータルサイトである WAM NET でも同じ書類が見られます。

  • WAM NET の「障害福祉サービス等情報検索」で事業所名を探す
  • 事業所の詳細ページの「サービス内容」タブを開く
  • 「就労継続支援A型における運営状況の評価(スコア)評価の結果(PDF)」を開き、2枚目を見る

売上や給料の実際の金額が載っていますが、まだ値が空欄や0円のままの事業所もあります。新しくできた事業所は、指定された年度(年度の途中にできた場合は次の年度も)スコア表そのものがまだ無いことがあります。

2つ目は、目標や支援内容をまとめた計画書(個別支援計画)をきちんともらっているかです。計画を作る前には面接があり、案の説明を受け、文書で同意したうえで、完成した計画書を受け取ることになっています。少なくとも6か月に1回は見直しが行われます。

3つ目は、職員の人数が足りているかです。利用者10人に対して、指導や生活を支える職員が常勤換算(フルタイム換算)で1人以上必要です。また、支援を取りまとめる責任者(サービス管理責任者)も常勤で1人以上いなければなりません。

4つ目は、労働条件を書いた紙をもらったか、そして最低賃金が守られているかです。もし時給が最低賃金より低いなら、減額特例(国から出る、最低賃金より低くしてよいという特別な許可)が必要です。

確かめること 決まり どう確かめるか
仕事があり、その売上で給料を払えているか 国の決まり(生産活動の収支) スコア表の2枚目にある、売上−経費と給料の合計。WAM NET で見られる
個別支援計画をもらっているか 国の決まり(個別支援計画) 面接→原案に文書で同意→計画書をもらう→6か月に1回は見直し
職員の人数は足りているか 国の決まり(職員の配置) 利用者10人に、指導・支援の職員が常勤換算で1人以上、責任者も1人以上
労働条件は紙でもらったか。最低賃金より低くないか 労働基準法・最低賃金法 労働条件通知書の交付。最低賃金より低いなら、減額特例の許可(都道府県労働局長)があるか

納得できないときの相談先は、内容で3つに分かれる

事業所と話し合っても納得できないときは、困りごとの内容に合わせて相談先を選びます。事業所の決まりに違反している疑いは、都道府県や市の窓口へ伝えます。職員の対応などの苦情は、都道府県の社会福祉協議会にある運営適正化委員会(苦情を調べてくれる窓口)へ相談できます。給料の未払いや労働条件のトラブルは、労働基準監督署(労働条件を見る国の窓口)や総合労働相談コーナーが窓口です。

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まとめ

  • 事業所に入るお金は、福祉の給付費、仕事の売上、雇うときの助成金の3つに分かれます。
  • 平成29年の決まりにより、仕事の売上で給料を払うことになり、給付費で払うことは原則禁止されました。
  • 令和の点数化によって状況が見えるようになり、現在は調べた事業所の約8割が売上で給料を払えています。
  • 今の所がおかしいと感じたときは、スコア表2枚目を見て、売上と給料の金額を自分で確かめられます。

通い続けるか、別の所も見ておくか迷ったときの見方

いまの事業所に不安を感じたら、まずはスコア表2枚目を確認してみましょう。

売上から経費を引いた額が給料の合計に届かない年が続き、経営改善計画も出されていないなら、次の年の給料や雇用に影響が出る可能性があります。ただし、売上が届いていないからといって、すぐに事業所が閉まるわけではありません。待ってもらえる期間も用意されています。

数字だけでなく、任されている仕事の内容が自分に合っているかや、体調を崩さずに通えているかも同じくらい大切です。あわてて退所を決めるのではなく、周りの状況を落ち着いて確かめることが大切になります。

「助成金目当てかも」と感じたら、ほかのA型事業所も並べて見ておく

仕事の売上で給料を払えている事業所は、調べた事業所の約8割です(令和7年3月末)。ジョブリウムでは、エリアや最寄り駅、稼働日数のほか、「工賃(月額)」の欄(A型では月額の給料)でも候補を絞り込めます。金額は、載っている事業所に限ります。今の所に違和感があるなら、候補を2〜3か所並べて、スコア表2枚目で見比べておくと落ち着いて決められます。見学に受給者証は要りません。

A型事業所を探す(4,501件)

参考

本記事は2026年9月時点の制度と公表資料にもとづいています。事業所の経営状況(19.3%)は令和7年3月末時点の4,006事業所の集計、解雇者数(7,292人)は令和6年度に各月内に10人以上の解雇が発生した事業所の集計、ジョブリウムのA型事業所掲載件数(4,501件)は2026年9月22日時点の数値です。

この記事の執筆者

中井裕哉

代表|就労継続支援A型事業所 ネクサスリンク

札幌市東区の就労継続支援A型事業所ネクサスリンク代表。飲食店、不動産、店舗開発など、業種の違う仕事を経験してきました。その中で身につけた「仕事は変わっても、経験は持ち運べる」という考えを大切に、一人ひとりの得意を生かして働ける場をつくっています。 現在は、「好きな仕事を楽しくやる」を、テーマに、AIとITの分野を中心に就労A型事業を展開。

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