障害者向けコラム

A型事業所が潰れる兆候とは?給料が遅れる前に、通っている本人の手元へ先に出ている書類

通っている事業所が潰れないか心配になったときは、職場のうわさだけで決めつけなくて大丈夫です。兆候は、毎年4月に公表されるスコア表の2枚目や、サービス管理責任者との面談で受け取る個別支援計画、それに毎月の給料日に、先に出てきます。

「経営が悪くて閉まること(閉鎖)」と「法律違反で止められること(指定取消)」は別の出来事です。見えるサインも全く違います。手元の書類と職場の様子を見比べて、心配なら次の候補を並べておきます。

この記事で使う言葉は次の4つです。

  • スコア表は、A型事業所が毎年4月に公表している点数の表のことです。2枚目には、仕事の収入と給料の実際の金額が載っています。
  • 個別支援計画は、利用者ごとの目標と支援の内容を書いた計画書のことです。本人が説明を受けて同意し、受け取るものです。
  • サービス管理責任者(サビ管)は、支援の計画を作り、本人と面談をする責任者のことです。
  • 指定取消は、法律違反があった事業所から、行政が事業の許可を取り上げる処分のことです。

「潰れる(閉鎖)」と「処分される(指定取消)」は別の出来事

事業所が無くなることには、大きく分けて2つの理由があります。1つは経営の都合で事業所を閉じる「閉鎖(廃止)」です。もう1つは、法律違反が見つかって行政から事業を止められる「指定取消」という処分です。

経営が悪くて閉鎖するときは、事業者が自分で決めて進めます。法律により、閉じる日の1か月前までに都道府県や市へ届け出なければなりません。また、続けて通いたい利用者のために、別の事業所を探して連絡や調整をしなければなりません。突然明日から通えなくなるわけではありません。

一方で、指定取消はルール違反に対する厳しい処分です。都道府県や市が行う監査を経て決められます。処分が決まると自治体のウェブサイトで公表されます。

処分の重さは違反の内容で変わり、取消しのほかに「一部だけ止める」処分もあります。

経営が悪くて潰れる兆候は「スコア表の2枚目」と給料日で見分ける

スコア表は、新しくできた事業所などを除き、どの事業所も毎年4月に障害福祉サービス等情報検索(WAM NET)などインターネットで公表する決まりです。見当たらなければ、事業所に「スコア表を見せてください」と頼んでかまいません。経営の悪化は、この書類と毎月の給料日に表れます。

点数 通知の定義 意味
60点 3年とも、仕事の収入から経費を引いた額が、給料の合計と同じか多かった 3年連続で経費を引いた残りで給料を払えている
50点 去年と2年前は、仕事の収入から経費を引いた額が、給料の合計と同じか多かった 2年連続
40点 去年だけ、仕事の収入から経費を引いた額が、給料の合計と同じか多かった 前年度は払えている
20点 2年前だけ、仕事の収入から経費を引いた額が、給料の合計と同じか多かった 前年度は赤字
−10点 去年と2年前は、仕事の収入から経費を引いた額が、給料の合計より少なかった 2年連続で赤字
−20点 3年とも、仕事の収入から経費を引いた額が、給料の合計より少なかった 3年連続で赤字
−50点 経営改善計画を求められ、期日までに未提出 別枠Ⅵ(生産活動の点数とは別)

※年度は4月から翌年3月までです。

スコア表の表紙には総合得点が書かれています。しかし、本当に確かめたいのはスコア表2枚目(様式2-2)です。ここには仕事の売上から経費を引いた額と、払った給料の総額が載っています。過去3年分の実際の金額がそのまま書かれています。売上から経費を引いた額より給料が多い状態が続いていれば、事業所はお金に困っています。

もうひとつのサインは給料日です。労働基準法24条では、給料の支払いルールが決まっています。「毎月1回以上、一定の期日を定めて」支払わなければなりません。給料の遅れが何度も続くようなら、お金のやりくりに行き詰まっている、数字で分かるサインです。1回遅れただけで、すぐ潰れるとは限りません。

解雇されたA型の利用者は、令和6年度に7,292人でした(10人以上解雇した事業所の集計)。くわしい背景は全国で解雇7,292人が出た背景とスコア表の見方で解説しています。これから事業所を選ぶ人は、「やめとけ」が当てはまる事業所を行く前に見分ける方法も参考にしてください。

処分される兆候は、通っている本人の側から先に見える

「潰れる兆候」と「処分される兆候」は別もの。経営が悪い(閉鎖につながる):スコア表の2枚目・給料日・解雇や閉鎖の予告。法律違反(処分につながる):職員が足りない・サビ管と面談していない・計画をもらっていない・届け出た住所と違う場所で活動・事実上休止なのに案内がない。兆候が1つなら今日確かめる、2つ以上なら通いながら候補を2〜3か所並べる、給料の遅れが続くなら労働基準監督署へ

法律違反による処分は、通っている本人の日常から気づくことができます。札幌市が2026年7月に公表した処分では、就労継続支援B型の2事業所が指定取消しを受けました。処分が効きはじめたのは令和8年(2026年)8月1日です。札幌市では令和7年度にも3法人(事業所は6か所)の指定取消しが公表されています。

公表された処分理由を見ると、現場で起きているおかしな様子がそのまま書かれています。「人員基準を満たしているかのように装い」「実態を伴わない場所」といった文言があります。「サービス管理責任者以外の従業者による面談結果をもって個別支援計画を作成」「明らかな人員欠如を把握していたにもかかわらず」といった文言もあります。

こうした違反が起きているとき、通っている本人の手元や職場には4つのサインが出ます。

  • 職員が極端に足りない:法律では、指導員と支援員の合計が利用者10人に1人以上、サビ管が1人以上必要と決められています。
  • サビ管と面談していない・計画書をもらっていない:サビ管が本人と直接会って、目標を書いた計画書を作ります。本人は説明を聞いて書面で同意し(サインし)、紙を受け取る決まりです。
  • 届け出た住所と違う場所で作業させている:届け出た場所には事業所の実態がなく、別の場所で活動させています。
  • 事実上の休止状態なのに案内がない:利用者への対応を何もしないまま、事実上、休んでいる状態です。

個別支援計画は、特によく見ておきたいところです。法律では、少なくとも6か月に1回は見直す決まりになっています。計画がきちんと作られていない事業所は、事業所がもらうお金(給付費)を減らされます(これを「減算」といいます)。「計画をもらっていない」と本人が気づいたときに、それは行政も見ている基準違反のサインです。減算だけで処分になるわけではありませんが、兆候の数には入れてください。

  • 兆候が1つ→まず今日確かめる(スコア表2枚目・給料日・計画)
  • 2つ以上→通いながら候補を2〜3か所並べる(記事の終わりに探し方)
  • 給料の遅れが続く→労働基準監督署(相談先の表)

情報提供から指定取消まで、処分はどう進むか

きっかけの一つは利用者や職員からの通報や相談です。情報を受け取った行政は、法律にもとづいて事業所に立ち入り、帳簿や書類を調べます。重大な違反が見つかると、事業者の言い分を聞く「聴聞」という手続きが原則として開かれます。聴聞のあと、処分(指定取消しや効力停止)が決まり、自治体のサイトで公表されます。

厚生労働省によると、令和3年度(2021年度)は全国192事業所が指定取消や効力停止となりました(取消し109・効力停止83)。

閉鎖や指定取消になっても、受給者証はそのまま使える

事業所が無くなっても、手元にある受給者証(福祉サービスを使うために市区町村からもらう証明書)が使えなくなることはありません。受給者証は事業所に対してではなく、あなた個人に自治体から出されているものだからです。

同じ種類のサービスであれば、別の事業所を探して新しい契約を結ぶことで、残っている支給量の範囲で通い続けることができます。原則として申請のやり直しは要りません(転居や更新の時期は別です)。

A型事業所は雇用契約があるため、事業所が閉まるときは解雇の扱いになります。労働基準法により、事業所は少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を払わなければなりません。

また、事業所の閉鎖や解雇で仕事を失ったとき、雇用保険では会社都合と同じ扱い(特定受給資格者)になります。離職前の1年間に雇用保険の期間が合わせて6か月以上あれば受給資格を得られます。くわしい手続きやもらえる日数については、閉鎖したときの手続きと雇用保険の給付日数にまとめてあります。

心配なときの相談先は3つ(表2)

事業所に不安を感じたときは、問題の種類に合わせて相談する場所を選びます。相談先は大きく3つあります。

相談先 こんなとき 何をしてくれるか
市区町村・都道府県の障害福祉の窓口(指定・指導の担当) 職員が足りない、計画をもらっていない、住所が違う、事実上休止 情報提供をもとに監査・指導・処分をする
運営適正化委員会(都道府県社会福祉協議会) 職員の対応やサービスへの不満・苦情 苦情の相談に応じ、調査したり間に入って話し合いを進めたりする
労働基準監督署・総合労働相談コーナー(378か所) 給料の遅れ・未払い・解雇予告(A型のみ) 労基法違反を直すよう指導。相談は無料

職員が足りない、計画書が作られていないといった法律違反の疑いは、行政の指定・指導担当窓口へ伝えます。寄せられた情報がきっかけとなり、立入検査や監査が行われます。

職員の態度や日々の接し方に納得がいかないときは、各都道府県の社会福祉協議会にある運営適正化委員会に相談できます。公平な立場で調べてくれます。職員や利用者とのトラブルで悩んでいるときは、職員や利用者とのトラブルの外の窓口も参考にしてください。

給料が期日に払われない、または急に解雇されたときは、全国378か所にある総合労働相談コーナーや労働基準監督署が担当します。A型事業所は雇用契約があるため、労働法に守られています。相談は無料で、予約も要りません。

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まとめ

  • 今日確かめる3つ:スコア表2枚目にある実際の金額、毎月の給料日の遅れ、個別支援計画を受け取っているか。
  • 閉鎖と処分の違い:経営で閉じる「閉鎖」と法律違反で止められる「指定取消」は別の出来事で、見えるサインも違います。
  • 相談先の切り分け:法律違反は自治体の指導窓口、サービスへの苦情は運営適正化委員会、給料の遅れは労働基準監督署へ相談できます。
  • 受給者証の扱い:事業所が無くなっても受給者証はそのまま使え、閉鎖による解雇なら雇用保険も会社都合と同じ扱いになります。
  • 兆候があっても、今日すぐ辞めなくてよい(次の節)。

兆候があっても、今日すぐ辞める必要はない

心配な兆候が1つ見つかったからといって、今日すぐに辞めてしまう必要はありません。明日突然事業所が無くなるわけではないからです。

事業所の閉鎖や解雇で仕事を失ったとき、雇用保険では会社都合と同じ扱いになります。理由なく自分から辞めると、会社都合の扱いにはなりません。ただし、給料の遅れ(3分の1を超える額が期日までに払われないこと)が理由なら、自分から辞めても会社都合と同じ扱いになります。

今の事業所に通って給料をもらいながら、落ち着いて次の準備を進めるのが安全です。手元の書類を確かめつつ、気になる事業所を少しずつ見に行ってみてください。

心配な兆候が2つ以上あったら、候補を2〜3か所並べておく

心配な兆候が2つ以上あったら、辞める前に候補を2〜3か所並べておきます。見学に受給者証は要りません。通いながら見に行って、比べてから決められます。

A型事業所を探す(4,501件)

参考

本記事は2026年9月時点の制度と公表資料にもとづいています。事業所数や処分件数などの数値は各出典の公表年度・調査時点のものです。また、掲載事業所数は2026年9月時点のジョブリウム掲載件数(4,501件)です。

この記事の執筆者

中井裕哉

代表|就労継続支援A型事業所 ネクサスリンク

札幌市東区の就労継続支援A型事業所ネクサスリンク代表。飲食店、不動産、店舗開発など、業種の違う仕事を経験してきました。その中で身につけた「仕事は変わっても、経験は持ち運べる」という考えを大切に、一人ひとりの得意を生かして働ける場をつくっています。 現在は、「好きな仕事を楽しくやる」を、テーマに、AIとITの分野を中心に就労A型事業を展開。

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